新型コロナワクチン、注目の有力候補はこの7つ:開発が急がれるワクチン、最終治験に進み期待を集める先行組とその現状

新型コロナワクチン、注目の有力候補はこの7つ:開発が急がれるワクチン、最終治験に進み期待を集める先行組とその現状
以下は、記事の抜粋です。


現在、新型コロナウイルスワクチンは、世界各地で150種類以上が開発されている。コロナウイルスそのものを殺したり、弱めたりした状態で用いるワクチンもあれば、ウイルスの一部(タンパク質や欠片)だけを使用するものもある。コロナウイルスのタンパク質を、発病の可能性が低い、あるいは発病できない別のウイルスに移植するものもある。また、開発中のものの中には、コロナウイルスの遺伝子の一部をワクチンに導入することによって、人間の細胞が一時的に、免疫系を刺激するために必要なコロナウイルスのタンパク質を作るようにするものも存在する。

ワクチンを市場に出すまでの期間は通常、10〜15年だ。ワクチンの臨床試験には、何段階ものプロセスがある。まずは少人数の健康な人々のグループを対象に、安全性と、免疫反応が誘発されるかどうかを確認する第1相試験。次の第2相試験では対象を拡大し、当該の病気に罹患している、あるいは罹患する可能性の高い人たちを含めて、ワクチンの有効性を評価する。第3相試験では、対象者を数千人にまで増やし、より多様な人々でワクチンの安全性と効果を確かめる。その後ワクチンは規制当局の承認を受けることになるが、これ自体に長い時間がかかることもある。また多くのワクチンは、引き続き第4相試験と呼ばれる、無期限で続けられる研究の対象となる。

以下に、第3相臨床試験以降に進んだ有力候補を紹介しよう。

モデルナ社
ワクチン名称:mRNA-1273

開発母体:米マサチューセッツ州に本社を置くバイオテクノロジー企業。米国立衛生研究所と共同開発。

ウイルスの遺伝物質(この場合はmRNA)の断片をヒト細胞に注入するタイプのワクチン。この断片がコロナウイルスを模したウイルスタンパク質を作り、コロナウイルスの存在を認識するよう免疫系を訓練する。この技術はこれまで、どの疾患に対しても承認された実績がない。もし成功すれば、ヒトへの使用が承認された初めてのmRNAワクチンとなる。

現状:7月27日、モデルナ社は第3相臨床試験を開始したと発表。ただし、第2相試験の結果も引き続き観察するとしている。第1相試験の予備的な結果は、健康な被験者がコロナウイルス抗体を産生し、またヒト免疫反応のもう一つの武器であるT細胞からの反応も得られたことを示している。第3相試験においては、米国で3万人の協力者に対してワクチン投与が行われる。モデルナ社は、2021年以降、少なくとも年間5億回分のワクチンを製造できる見込みだと発表している。その理由の一つとして、スイスの製薬会社ロンザ社との契約によって、年間最大10億回分のワクチン製造が可能になったことを挙げている。

ファイザー社
ワクチン名称:BNT162b2

開発母体:米ニューヨーク州に本社を置く世界最大級の製薬会社。ドイツのバイオテクノロジー企業ビオンテック社と共同開発。

ファイザー社とビオンテック社の候補ワクチンも同じくmRNAワクチンであり、ビオンテック社が過去、同技術を実験的ながんワクチンに用いた実績に基づいて開発が進められている。ファイザー社は米国政府と、2020年12月までに1億回分のワクチンを提供する契約を約20億ドルで結んでいる。この契約は、ワクチンが承認・供給された時点で発効する。

現状:7月27日、ファイザー社とビオンテック社は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の伝播が著しい地域の多様な集団を対象とする、第2相と第3相を兼ねた試験を開始。米国39州、ブラジル、アルゼンチン、ドイツにおいて、対象者3万人におけるワクチンの効果を検証する。同プロジェクトは、早ければ2020年10月に規制当局に承認申請し、2021年末までに13億回分の供給を目指している。第1および第2相試験データの予備的な結果は、このワクチンが新型コロナウイルスのタンパク質に特異的な抗体とT細胞応答を産生することを示している。

オックスフォード大学
ワクチン名称:ChAdOx1 nCoV-19

開発母体:英国の大学。英バイオ製薬大手アストラゼネカ社と共同開発。

オックスフォード大学の研究チームは、コロナウイルスが細胞に侵入するのを助ける新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を、風邪の原因となるアデノウイルスを弱毒化させたものに移植。このアデノウイルスをヒトに注射することによって、スパイクタンパク質が免疫反応を引き起こすことを狙う。アストラゼネカ社とオックスフォード大は、10億回分の生産を予定し、原価で販売することで合意している。

現状:第1相、第2相臨床試験の予備的な結果は、このワクチンが、抗体の増加やT細胞からの強い免疫反応を誘発したこと、また副作用は倦怠感や頭痛などの軽度なものであったことを示している。現在は第3相臨床試験に進んでおり、ブラジル、英国、米国、南アフリカで、最大5万人の志願者を採用することを目指している。

シノバック・バイオテック(科興控股生物技術)社
名称:CoronaVac

開発母体:中国のバイオ製薬企業。ブラジルのブタンタン研究所と共同開発。

CoronaVacは不活化ワクチン、つまり感染力をなくしたコロナウイルスを利用するワクチンだ。不活化された病原体は病気を引き起こすことはないが、年に1度接種するインフルエンザワクチンと同じように、免疫反応を引き起こせる。

現状:7月3日、ブラジルの規制当局はCoronaVacに対し、第2相試験の結果を引き続き観察しつつ、第3相試験に進むことを承認した。シノバック・バイオテック社によると、第1相、第2相試験ではこれまでのところ、同ワクチンが重篤な副作用を伴わない免疫反応を引き起こすことが示されているという。「サイエンス」誌に掲載された、初期試験の予備的な結果では、このワクチンが10種類の新型コロナウイルスの株を中和する抗体を産出することが明らかになっている。第3相試験では、ブラジルの医療従事者から約9000人を採用する予定だ。

シノファーム(中国医薬集団)社
ワクチンの名称:なし

開発母体:中国の国有製薬会社。中国、武漢生物製品研究所と共同開発。

シノファーム社もまた、不活化新型コロナウイルスワクチンを採用し、2020年末までの一般市民への提供を目指している。同ワクチン候補の初期試験では、参加者に強い中和抗体反応が誘発され、重篤な副作用はみられなかった。

現状:7月中旬、シノファーム社はアラブ首長国連邦(UAE)において、18〜60歳の、基礎疾患のない志願者1万5000人を対象に第3相試験を開始。UAEを選んだのは、同国がおよそ200カ国から集まった多様な人口を抱えている点が、試験場所として理想的であったためだ。

マードック子供研究所
名称:BCGワクチン

開発母体:オーストラリア最大の子供の健康に関する研究機関。メルボルン大学と共同研究。

どんなワクチンか:過去100年近くにわたり、結核の予防に用いられてきたBCGワクチンは、弱毒化した生きたウシ型結核菌だ。長年の間に、この生ワクチンが免疫系を刺激することで、体が結核以外の病気を撃退する際の助けとなる可能性を示す証拠が見つかっている。研究者らは、こうした利点が新型コロナウイルスに対しても有効かどうかを調べており、現在、オーストラリアで第3相試験が行われようとしている。ただしWHOは、4月12日の時点で、BCGワクチンがコロナウイルス感染症から人々を守る証拠はないと述べている。

現状:4月、マードック子供研究所の研究者らは、BCGがコロナウイルスにも効果を発揮するかどうかを確かめる一連のランダム化比較試験を開始。研究のために1万人の医療従事者の採用を目指している。

カンシノ・バイオロジクス(康希諾生物)社
名称:Ad5-nCoV

開発母体:中国の製薬スタートアップ。

カンシノ・バイオロジクス社も、弱毒化したアデノウイルスを用いて、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を体内に導入するウイルスベクターワクチンを開発している。「ランセット」誌に掲載された第2相試験の予備的な結果は、このワクチンが「1回の接種で大多数の患者に有意な免疫反応」を誘発したことを示している。重篤な副作用は報告されていない。

現状:同社は厳密にはまだ第2相試験の段階にあるが、6月25日、限定的にヒトへの使用が承認された。中国政府はこのワクチンを軍隊でのみ、1年間使用することを認めている。


アンジェス社の発表によると、新型コロナウイルス感染症向け DNA ワクチンは、大阪市立大学医学部附属病院において第 1/2相臨床試験での低用量の接種が完了したそうです。臨床試験の概要によると、以下のような臨床試験です。第1相と第2相を兼ねた試験の結果が出るのがあと1年先なので、外国はかなり先行しています。日本製のワクチンが注目の有力候補に入らないのは当然かもしれません。

概要:健康成人志願者を対象とした、筋肉内接種における治験薬の安全性及び免疫原性の評価
目標症例数:30 例(低用量群 15 例、高用量群 15 例による 2 週間間隔での 2 回接種)
予定試験期間:2021 年 7 月 31 日まで 。

「世界各地で150種類以上が開発されている」というのがすごいですね。日本のはDNAワクチンですが、モデルナとファイザーのアメリカ勢がmRNAワクチンとは知りませんでした。いずれにしても、実用化はかなり先だと思いますので、今は感染しないように気を付けましょう。

 

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