線維筋痛症(fibromyalgia)に太極拳が有効

線維筋痛症に対する太極拳のランダム化臨床試験(A Randomized Trial of Tai Chi for Fibromyalgia)

以下は、論文の抜粋です。


背景:これまでの研究により、太極拳は線維筋痛症の患者に治療効果が示唆されている。

方法:線維筋痛症に対して、太極拳を教育とストレッチを組み合わせた治療介入をコントロールとして比較するランダム化臨床試験を行った。主要エンドポイントは、12週目の試験終了時に実施するFibromyalgia Impact Questionnaire (FIQ)スコア(0~100点で、高いほど症状が重度)の変化とした。すべての評価を24週目で繰り返し、反応の持続性を調べた。

結果:66例のうち、太極拳群の33例でFIQスコアとQOLにおいて臨床的に重要な改善が認められた。FIQスコアの平均値(±SD)は、太極拳群ではベースライン62.9±15.5、12 週目35.1±18.8、対照群ではそれぞれ68.0±11、58.6±17.6だった(コントロール群が9ポイントしか改善しなかったのに対して28ポイントも改善した!)。有害事象はなかった。

結論:太極拳は線維筋痛症に対する有用な治療法の可能性があり、より大規模な長期臨床研究を行う価値がある。


線維筋痛症(fibromyalgia)は、原因不明の全身の疼痛、不眠、うつ病のなどの精神神経症状、過敏性大腸炎、膀胱炎などの症状を主症状とする病気です。

症状の進行に伴い、あらゆる治療に対して著しい抵抗性を示し、激しい疼痛が筋肉・関節などに及ぶ四肢から身体全体に拡散するため、患者さんのQOLは著しく低下します。

この病気は、世界中では2億人の患者さんがいるといわれています。わが国でも、厚生労働省研究班の調査において、全国で200万人以上の患者さんがいることがわかっており、その80%が女性です。

激しい疼痛に加えて、うつ病などの精神障害症状、過敏性大腸炎、口腔、胃腸炎、シェーグレン症候群に類似したドライアイ、ドライマウス、末梢神経炎と思わせる手足のしびれなどがみられます。また、9割以上に睡眠障害がみられ重要な疼痛の増悪因子となっています。

薬物療法としては、症状によって、抗てんかん剤、抗リウマチ剤、ガバベンチン、抗うつ薬、抗不安薬、抗けいれん薬などが投与されています。詳しくは「日本線維筋痛症学会」のホームページをご覧ください(HPをみる)。

NEJMに掲載された臨床研究の規模は小さく、single-blindなのでプラセボ効果だと批判する人もいるそうですが、健康教育とストレッチという通常の治療介入よりもはるかに効果があったことは注目に値すると思います。

Tai chi combines meditation, slow and gentle movements, deep breathing, and relaxation.

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