“内臓脂肪”が多いと脳の老化が加速──各部位の脂肪と脳への影響を調査
以下は、記事の抜粋です。
肥満が脳の健康に悪影響を及ぼすことは広く知られているが、これまでの研究の多くは体格指数(BMI)を主要な指標として用いてきた。しかしBMIは全身の肥満度を示す単純な指標であり、身体のどの部位に脂肪が蓄積しているか、またそれが脳にどのように影響しているかという情報を捉えることができていない。
そこで、香港理工大学やシンガポール国立大学の研究チームは、英国バイオバンクの1万8000人以上の成人を対象に、二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)を用いて腕と脚、体幹(お腹周り)、内臓の4つの部位の脂肪量を精密に測定。それぞれが脳にどう影響するかを脳画像検査と認知機能テストによって詳細に分析した。
結果、脂肪の蓄積部位によって影響を受ける脳領域のパターンが異なることが判明。腕や胴体の脂肪が多い人では、体を動かすことに関わる脳の領域が薄くなっていることが分かった。また腕の脂肪は、記憶をつかさどる海馬という脳の部分を小さくすることも明らかになった。海馬の縮小はアルツハイマー病と関連があることが知られている。
脚の脂肪については、感情や記憶に関わる脳のネットワークの働きを弱めることが分かった。最も問題なのは内臓脂肪だ。内臓の周りにつく脂肪は、脳の中で神経線維が通る白質という部分にダメージを与えていた。内臓脂肪は炎症を起こす物質を大量に分泌し、それが脳にまで影響を及ぼして神経の劣化を引き起こすと考えられる。
研究チームは「脳年齢」という概念を使って、脂肪が認知機能に与える影響も調べた。実際の年齢より脳が老けて見える人は、推論する力、計画を立てる力、情報を処理する速さ、記憶力などが低下していた。特に内臓脂肪が多い人では、これらの認知機能への悪影響が顕著だった。
元論文のタイトルは、”Regional adiposity shapes brain and cognition in adults(身体の肥満部位が成人の脳と認知機能を決める)”です(論文をみる)。本研究は横断研究であるため、因果関係を推論することはできませんが、認知機能の劣化を避けたいヒトは、内臓脂肪を貯めないようにしてください。



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