「道徳は崩壊したか」と視聴者に問いかけ、ガザ飢餓でイスラエル人動揺
以下は、記事の抜粋です。
イスラエルの主要テレビ局はパレスチナ自治区ガザで飢餓に苦しむ住民の様子を放映した後、アンカーはカメラを見つめて「これは広報の失態ではなく、道徳の崩壊であると認めるときが来たのではないだろうか」と視聴者に問いかけた。
メッセージアプリ「ワッツアップ」のグループチャットや、人権団体の報告からは、世論が戦争支持から離れつつある兆候が見られる。2023年10月7日にハマスがイスラエルを急襲し、1200人を殺害した上で250人を拉致したことに端を発した戦争で、ガザでは6万人近くが死亡した。国連世界食糧計画(WFP)は200万人余りが「深刻な食料危機」に直面しており、飢餓が広がっていると警告した。
「虐殺の後、ハマスを全力でたたくのは不可避だったし、民間人の犠牲は仕方なかった」と中道派新聞イエディオト・アロハノトのコラムニスト、ナフム・バルネア氏は振り返る。
しかし「軍事的な犠牲と国際社会におけるイスラエルの立場、そして民間人の犠牲というダメージは悪化の一途をたどっている。ハマスが原因ではあるが、イスラエルにも責任がある」と主張した。
コンサルティンググループを経営するシャーウィン・ポメランツ氏は、保守系新聞エルサレム・ポストに寄稿し「2年前に正義の戦争だったものが、今や不正義の戦争になった。終わらせなくてはならない」と述べた。
センチメントの変化は膨大な量の悪いニュースに表れている。イスラエル人留学生の排斥や兵士の戦死を伝える報道に、最近では飢えた子どもの映像も加わった。「ガザに飢餓はない」と言い切るネタニヤフ首相の発言には、熱心なイスラエル支持で知られるトランプ米大統領でさえも「あれは本物の飢餓だ。ごまかしようがない」と発言した。
5月の世論調査では、65%のイスラエル人がガザの人道状況を懸念していないと回答していたが、最近になってイスラエルのメディアでは飢餓問題が大きく扱われるようになった。外国の人権団体は戦争開始時から、イスラエルの対応を非難してきたが、今では国内の人権団体が「ジェノサイド(民族大量虐殺)」という言葉を用いて自国を批判するようになった。
イスラエル5大学の学長は28日、ネタニヤフ首相に宛てた連名の公開書簡で「ガザの飢餓危機に対する真剣な対応」を訴えた。「ホロコーストの恐怖を経験した民族として、われわれは罪のない男女や子どもたちに残酷な危害が無差別に及ぶのを、何としても防ぐ責任を負う」と記した。
野党指導者のラピド前首相は今週、ハマスとの戦争は災害であり、政府の失策だと演説で非難。ネタニヤフ首相に戦闘停止を訴え、中東諸国との協力を通じてハマスを排除するよう求めた。
停戦交渉が再びとん挫した後、イスラエルの主流派メディアではハマスがすでに敗北したと宣言する論説が増えた。その一方で、飢餓が広がっているとの警告に反論する動きもある。
世界中のメディアが掲載した痩せ細った子どもの写真について、ネタニヤフ政権はこの子どもがやせているのは遺伝子の病気を患っているせいであり、1カ月余りも前にガザからは退避済みだと主張した。証拠は示していない。イスラエル軍はまた、豊富な食料に囲まれて健康そうに見えるハマス戦闘員の写真を配布した。
今のところ、ネタニヤフ首相の言動に方針転換の兆しはない。首相は7月28日、「これは正義の戦争であり、倫理の戦争、われわれが生存するための戦争だ」との声明を出した。
「これまで通り、われわれは責任ある対応を続けていく。人質の返還とハマスの打倒をこれからも求めていく。イスラエル人にとっても、パレスチナ人にとっても、それが唯一、平和を確実にする手段だ」と述べた。
もう一つの記事です
イスラエル人権団体、自国の行為を「ジェノサイド」と初めて断定 ガザの惨状に戦慄
以下は、記事の抜粋です。
イスラエルの主要人権団体2団体がパレスチナ自治区ガザ地区の惨状をめぐり、「ガザのパレスチナ人に対するジェノサイド(集団殺害)を犯した」としてイスラエルを非難した。イスラエルの人権団体がイスラエルの行為をジェノサイドと断定するのは初めて。
人権団体のベツェレムは7月28日に発表した報告書で、「ガザ地区におけるイスラエルの政策とその恐ろしい結果を、この攻撃に関するイスラエル政府高官や軍司令官の発言と併せて検証した結果」、ジェノサイドと断定するに至ったと発表した。
イスラエル人権医師会(PHRI)は、ベツェレムに加わってガザに対するイスラエルの行為をジェノサイドと呼ぶと発表した。これとは別に、法的・医学的な検証を行った結果、「ガザの医療システムを意図的かつ組織的に殲滅させる」行為があったと結論付けた。
イスラエル政府報道官は「この国には言論の自由がある。だが我々はこの主張に強く反論する」と記者団に語り、イスラエルはガザへの援助物資搬入を許していると付け加えた。イスラエル外務省も「政治的動機に基づいている」として報告書を一蹴。イスラエル軍は「事実無根」と反論した。
ベツェレムは79ページの報告書の中で、ガザに対するイスラエルの行為について「ハマス政権やその軍事力を解体させる試みとして正当化することも説明することもできない」と断言している。
報告書を発表した同団体のユリ・ノバク代表は「我々は何の準備もできないまま、自分がジェノサイドを犯している社会の一員だと気付かされる。私たちはその瞬間に深い痛みを感じる」と語った。
「しかしここに住み、日々現実を目の当たりにしているイスラエル人とパレスチナ人として、私たちには真実をできるだけはっきり口にする義務がある。イスラエルはパレスチナ人に対するジェノサイドを犯している。私たちのジェノサイドには背景がある」
ベツェレムはイスラエルがガザ地区で、集団殺害(直接的な攻撃と、壊滅的な生活状況に陥れることの両方を通じた殺害)、大規模なインフラ破壊、社会構造の破壊、大量逮捕と拘束した人たちに対する虐待、民族浄化の試みを含む集団避難の強要を行っていると指摘した。さらに、イスラエル高官は今回の紛争を通じて「ジェノサイドの意図を表明している」とした。
今回の報告書は、ガザやヨルダン川西岸、東エルサレム、イスラエルの領内でイスラエル軍がパレスチナ人に対して犯したとされる「数千件の事件」に関する情報などを、過去20カ月にわたって収集した結果に基づいている。
PHRI独自に収集した証拠をもとに、「ガザ地区の医療など人口の存続に不可欠な体系の意図的かつ組織的な破壊」が裏付けられたと指摘。「これは戦争の巻き添え被害ではない。集団としてのパレスチナ人に危害を加えることを目的とした意図的な政策だ」と位置付けた。
ベツェレムは、ガザの状況についてはイスラエル政府に責任があるとする一方で、ジェノサイドを許した国際社会にも非難の矛先を向けている。
「多くの国家指導者、特に欧州と米国の指導者は、ジェノサイドを阻止するための実質的な行動を控えただけではない。イスラエルの『自衛権』を認める声明や、武器弾薬の提供を含む積極的な支援を通じ、ジェノサイドを可能にした。『イスラエルの行為はジェノサイドに該当する危険が大きい』と国際司法裁判所(ICJ)が判断した後もそれは続いた」
7月28日にはイスラエルの名門5大学の学長が連名でイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に宛てた公開書簡を発表し、ガザの危機的状況をめぐる懸念を伝えた。
「多くのイスラエル国民と共に我々も、ガザで日々発生している恐ろしい光景に衝撃を受けている。ガザでは飢えと病気が最も弱い人たちの命を奪っている」。公開書簡はそう指摘し、一部政治家が「ガザの意図的な破壊と民間人の強制的な避難を支持している」発言に「戦慄を覚える」としている。

破壊されたパレスチナ自治区ガザ地区北部の建物

ガザ市の食料配給所に集まったパレスチナ人(7月25日)


コメント
ハマスがガザ住民を肉の壁にしてることが、事態をより一層悪化させてるんですよね…本当に悲惨です。