2024年の医学のブレイクスルー7選

明るい希望をもたらす2024年の医学のブレイクスルー7選
以下は、記事の抜粋です。


1. 処方箋不要の経口避妊薬
米国では2024年、処方箋なしで入手できる経口避妊薬が初めて発売された。米食品医薬品局(FDA)は、1日1回服用する経口避妊薬「オーピル(Opill)」を2023年に承認しており、年齢、保険加入の有無、医師の診察の有無に関わらず、誰でも店頭で買えるようになった。

オーピルはプロゲスチンというプロゲステロンに似た合成ホルモンのみを含んでいる。プロゲスチンのみを含む経口避妊薬(いわゆる「ミニピル」)は、一般に副作用が少なく、授乳中の人や、高血圧の人や、血栓症の既往歴のある人も服用できる。

2. 移植後も成長する心臓弁
世界初の部分心臓移植手術で、生まれつき心臓弁に問題のある男の赤ちゃんに、成長とともに大きくなる新しい心臓弁が移植された。

問題のある心臓弁を機械や生体(ウシやブタの生体組織)の弁で置き換える手術は60年以上前から行われているが、これらは成長することも自己修復することもない。また、機械弁の場合は、患者は血栓を防ぐ薬を生涯にわたって服用しなければならない。

今回の手術で赤ちゃんに移植されたのは、心臓弁と動脈は正常に機能していた幼児から提供された心臓弁だ。移植された弁は生きているので、移植された心臓と同じように成長し、自己修復し続けることができる。

3. ブタからヒトへの臓器移植
医師たちは2024年、ブタからヒトへの臓器の移植を複数例、成功させた。これは、移植待機リストに名前を連ねる人々にとって新たな可能性を開く画期的な出来事だ。

移植された臓器のうちいくつかが腎臓であることは重要だ。腎臓は移植が必要とされる臓器の筆頭で、末期の腎臓病患者が増えているのに伴い、移植を必要とする患者も増加の一途をたどっているからだ。

3月には米ボストンのマサチューセッツ総合病院の医師たちが、62歳の男性に対して、遺伝子改変ブタの腎臓を移植した。ドナーのブタは、有害なブタの遺伝子が除去され、ヒトの遺伝子を追加して移植の適合性を高めている。さらに、ブタ内在性レトロウイルスも不活性化して、ヒトへの感染リスクをなくした。

4月には米ニューヨーク大学の医師たちが、54歳の女性に対して、拒絶反応を抑えるために遺伝子編集したブタの腎臓と胸腺の二重移植を実施した。

しかし、動物からヒトへの臓器移植が一般的になるには、まだまだ学ぶべきことがたくさんある。いずれの患者も、ブタの臓器を移植された後、長くは生きられなかったが、死因は移植とは関連のないものだった。

これまで研究から、動物由来の臓器への拒絶反応は、人間のドナーから提供された臓器への拒絶反応とは全く異なるプロセスで起こることが分かっていて、科学者たちはまだすべてのハードルを克服するには至っていない。

4. アルツハイマー病を判定する血液検査
スウェーデンの科学者たちは、高齢者のアルツハイマー病を約90%の精度で判定できる血液検査を開発した。

現在、アルツハイマー病の正確な診断には、脳脊髄液の検査かPETスキャンによる脳画像診断が必要だ。しかし、これらは、認知機能の低下を訴える患者を最初に診ることが多いプライマリケア医のクリニックで行える検査ではない。新しい検査「PrecivityAD2」では、アルツハイマー病の複数の主要なバイオマーカーの血中比率を測る。

しかし、この検査はまだFDAの承認を受けておらず、現時点では公的および民間の保険の対象にはなっていない。

5. コロナ・インフル混合ワクチン
新型コロナとインフルエンザの両方を予防できる混合ワクチンが、早ければ2025年にも利用可能になりそうだ。モデルナ社が臨床試験を行った混合mRNAワクチンは、個別のワクチンよりも優れた免疫反応を誘導し、臨床試験中の安全性と副作用の強さも同程度だった。

しかし、ビオンテック社とファイザー社が開発した混合mRNAワクチンは、インフルエンザB型に対する免疫反応が十分得られていない。また、ノババックス社の混合ワクチン(mRNAではなく組み換えタンパクワクチン)は、安全性への懸念から臨床試験が保留されたが、後にその懸念はワクチンとは無関係だと判明した。

6. 女性が自己免疫疾患になりやすい理由の理解が深まる
全身性エリテマトーデスや関節リウマチなどの自己免疫疾患は、免疫系が自分自身の細胞を攻撃してしまう病気で、圧倒的に女性に多い。実際、自己免疫疾患の患者の78%以上が女性だが、理由は不明だ。

科学者たちは、女性が持つ2つのX染色体のうちの1つを不活性化するしくみの不具合が自己免疫疾患に関連している可能性があることを発見した。

男性はY染色体とX染色体を1つずつ、女性はX染色体を2つ持っている。X染色体は1つだけ機能していればよいので、通常、女性が持つ2つのX染色体のうち1つは全身の細胞で不活性化されている。新しい研究では、X染色体を不活性化するタンパク質が自己免疫疾患の引き金となっている可能性が示唆された。

7. ピーナッツなどに対するアレルギー反応を減らす薬
子どものいる人々に朗報だ。FDAが、ピーナッツなどの食品に対するアレルギー反応を減らす薬として、ゾレア(一般名オマリズマブ)を1歳以上の患者に使うことを承認した。

米国では10人に1人以上が食物アレルギーを持っていて、子ども、特に幼児や乳児ではもっと多い。こうした人々がアレルギーを引き起こす食物(アレルゲン)を摂取すると、数分から数時間以内に反応が現れ、軽いものから命にかかわるものまで、さまざまな症状が出る。

ゾレアは日本では既存の治療で効果が不十分な気管支喘息、季節性アレルギー性鼻炎、特発性の慢性蕁麻疹に使われている。

2月に発表された新しい研究により、オマリズマブは、治療開始から約4カ月後にはピーナッツやその他の食物に対するアレルギーのリスクも大幅に減ることが明らかになった。しかし、この薬は2週間または4週間ごとに注射する必要があり、食物アレルギーを完治させるものではないため、患者は引き続きアレルゲンを含む食物を避ける必要がある。


科学的ではない理由で日本では実現に遠いものがいくつかあると思います。Opillは、アメリカならアマゾンで買えます。ただ、2025年1月20日からは買えなくなるかもしれません。

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