安い薬価➡日本で薬を売ると損➡欧米の製薬企業の新薬がいつまで待っても国内に入ってこない(ドラッグロス)

「安い薬価」が薬を遠ざける?-「ドラッグラグ」から「ドラッグロス」の時代へ
以下は、記事の抜粋です。


新薬がわが国に入ってこない「ドラッグロス」の現実
海外では標準的に承認され使用されている医薬品が、日本では使えない--。かつては欧米より承認が遅れる「ドラッグラグ」が問題視されていましたが、近年はより深刻な「ドラッグロス」への懸念が急速に高まっています。ドラッグロスとは、「欧米の製薬企業が日本国内での治験や発売自体を見送り、新薬がいつまで待っても国内に入ってこなくなる事態」を指します。医師にとっても患者にとっても看過できないこの問題の背景には、国際的な薬価政策の地殻変動があります。

米国・トランプ政権の「最恵国待遇(MFN)」政策がもたらす余波
背景として急浮上しているのが、米国における薬価政策の大転換です。トランプ大統領は2025年、米国内の薬価引き下げを目的に「最恵国待遇(MFN)」に関する大統領令に署名しました。これは、わが国や欧州など他国の実質価格(ネット価格)を参照し、バスケットの中で「2番目に低い価格」などを基準に米国の公的保険などの価格を引き下げる政策です。

世界最大の医薬品市場である米国は、グローバル新薬の売上・利益の大部分を支えています。その一方で、わが国の薬価は、算定時に米英独仏の平均価格を参照する外国平均価格調整があるものの、毎年の薬価改定や市場拡大再算定などにより、収載後に価格が急速に削られていく仕組みになっています。そのため、国際的に見ても低水準にとどまる品目が少なくありません。

もし、わが国で安く設定された薬価が米国の参照価格の底を押し下げ、巨大市場である米国内の薬価引き下げに直撃するのであれば、製薬企業にとっては「わが国で安価に発売するより、わが国への投入自体を見送るか遅らせたほうが得策」という経営判断が成り立ってしまいます。

国内企業の4割に影響、スイスでも起きている「新薬見送り」
この懸念はすでに現実化しつつあります。日本製薬工業協会が加盟16社を対象に行った調査では、37.5%が「すでに米国の薬価政策による影響が生じている」と回答しました。

ロシュやノバルティスなどの大手製薬企業が本拠を置くスイスでも同様の事態が進行しています。同国では2025年1月~2026年6月に承認された革新的新薬22品目のうち、約3割に当たる7品目で国内の保険適用申請が見送られました。米国との価格差が本国市場での収益に及ぼす影響を警戒した結果とみられており、わが国にとっても対岸の火事ではありません。

低薬価の歪み-チルゼパチドの教訓と未発売新薬
低薬価による歪みは、臨床現場にもすでに現れています。糖尿病治療薬チルゼパチド(商品名:マンジャロ)は、わが国の薬価が主要国の中で最も低い水準に抑えられた結果、安価な入手を求めて近隣国から来日する「医療ツーリズム」や、自由診療による適応外の痩身目的処方が問題視されました。

さらに深刻な実例として、日経新聞(「がんや糖尿病、承認済み新薬の発売遅れ 割安な薬価を米欧勢が警戒か」)が報じたように、国内で製造販売承認を取得しながら薬価が決まらず発売に至っていない経口乳がん治療薬などの事例も出現し始めています。

従来、診療報酬改定のたびに「薬価引き下げ」を財源として捻出し、医療費を調整してきたわが国の手法は、世界の薬価が連動する時代を迎えて完全に限界を迎えつつあります。海外ガイドラインで「標準治療」とされる分子標的薬や遺伝子治療薬にわが国だけアクセスできないという、医療の後進国化すら危惧される状況です。


先日のブログで書いた高齢者にも効果が高いサノフィの高用量インフルエンザワクチン「エフルエルダ筋注」の2026/27シーズンの発売および定期接種への導入が見送りになったのも同じ理由でしょうか???

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