「フランスのデモと暴動は全く別の現象」という話

【フランス大規模デモ】「どうして日本ではこんな報道になってしまうんだろう……」現地在住日本人ジャーナリストが語る真実
以下は、記事の抜粋です。


10月17日、フランス全土で約55万人が参加した大規模なデモが起きた。放火、破壊、略奪行為も発生。日本のメディアも大きく報じたか、残念ながら混乱ぶりしか伝わってこなかった。フランスに半世紀以上在住するジャーナリスト、広岡裕児氏が現地ならではの情報をお伝えする。

国外のメディアは状況を理解していない
日本だけでなく、ヨーロッパも含めて、国外のメディアは状況を全くわかっていません。デモ行進そのものより、暴徒がガラスを打ち壊したりシャッターをこじ開けたりして、店に押し入り商品を略奪する荒々しい様子を主に伝えていました。誰がどんな行動をしているのか、という事実と背景を詳しく取材せず、ただ大変な混乱が起きている、と表面をなぞっただけです。

デモが暴徒化したのではない、全く別の現象
そもそも、デモが暴徒化した、という報道が間違っているのです。その流れで単純にまとめるのは乱暴以前に誤報です。「デモが暴徒化したのではない」「デモと暴動は全く別の現象」なのです。この点をまず押さえておかないとフランスで今起きていることの核心はつかめず、理解しやすい枠組みや流れに勝手にあてはめて誤認してしまいます。

何に対するデモなのか
この点は日本でもかなり正確に報じられています。高校生が教育環境に対して9月から抗議の声を上げ、その活動は広がっていきました。校舎の傷みが激しいというような施設面の問題だけでなく、教師不足が日常化しており、教師が休むと代わりがいなくて授業ができなくなってしまう問題への対応を主に求めていました。大学入試制度への問題提起も行われていますが、高校生の主な求めは、教師不足と老朽施設の改善という現実的なものです。

デモは特別ではない
日本ではデモそのものが何か反政府的で政治的に偏っている人々が行うものという印象を持たれているかもしれません。当地ではデモは特別なことではなく、街に出て自分の意見意思を示すもので、集団の力で威圧する行為とは違います。デモに参加した高校生が特定の思想や主義主張の持ち主というわけでもない。

デモを始めたのは高校生でも、教育環境の改善を求めるという主張がもっともだな、と納得して受け止めれば周囲の人々も賛同していく。高校から大学、組合などへと賛同が広がり、こうして9月に始まったデモは回を重ねるごとに参加者が増えていきました。

物価高への抗議も
デモで物価高への対策も訴えられるようになりました。物価高はフランスに限ったことではありませんが、今年に入り、アメリカのトランプ政権のイラン攻撃によって生じた情勢で、物価は目に見えて上がってしまったのです。物価高への対策も求めることになったことで、デモの意味合いが変節したわけではありません。

三種類の人々
こうして10月17日土曜を迎えます。先に「デモが暴徒化したのではない」「デモと暴動は全く別の現象」と、まず押さえていただきたい点を話しましたが、この日、異なった三つの要素の人々がいました。

「デモ本来の人々」「ウルトラ左翼・ブラックブロック」「略奪だけが目的の人々」です。

「デモ本来の人々」は、高校生や大学生、抗議の趣旨に賛同した人々、労組などです。労組がデモに参加することで、デモはむしろ安定するのです。労組はいわばデモのプロで統制を取って動ける。デモに乗じる不審な者が紛れ込んでいれば排除します。デモの意図が誤解されれば迷惑をこうむるからです。デモ本来の人々が警察を挑発することはない。デモの途中や終了後に暴徒に豹変することもありません。

「ウルトラ左翼」「ブラックブロック」は、呼び名は違っても思想的にはほぼ同じです。議会主義を否定して暴力、破壊活動で体制を打倒しようと考えている人々です。ウルトラ左翼は、文字通り極左です。ブラックブロックは、身元が簡単に割れないよう、皆同じような黒い服や帽子を着用し、黒ずくめの姿からこう呼ばれます。

ウルトラ左翼・ブラックブロックの目的は、多くの人が集まる大規模なデモの機会を利用して社会に混乱状況を起こすことです。デモ本来の人々にとっては、許しがたい存在であり、デモからは当然排除します。それでも紛れ込んでしまう。

そして最後に「略奪だけが目的の人々」です。デモに全く関心はないし、体制を揺るがすことも考えていない。ウルトラ左翼・ブラックブロックが放火や破壊を行っている様子をテレビやSNSで見て、これなら店から略奪できると思っただけです。教育環境の改善、物価高対策といった、デモの目的とは全く関係のない、略奪のための略奪だったのです。

では、誰が略奪を行っていたのか。パリの場合、略奪を目的に集まってきたのは、スラム化した問題のある地区に住む主に若い世代です。リーダーがいるわけでも組織化されているわけでもありません。

1990年代にパリのみならずフランスの都市郊外の団地が急速にスラム化していきました。低所得者、失業同然の住民が増え、どうせ学校を卒業しても職がないと思う若者が増えた。治安も悪化し、取材はおろか、よそ者は立ち入ることすら危険になりました。麻薬取引のような犯罪の温床にもなっていきました。サッカー選手になるか麻薬取引で財を成すしか、この環境を脱出できないと語られていたほどです。

フランスは人種や宗教での差別は決して強くありません。むしろ階級とでも言えるような面での差別が強い。その一例は学歴で、一番わかりやすい例は所得の差による差別です。

郊外の団地は貧しくて治安が悪いとレッテルを貼られ、そこが住所というだけで仕事に応募しても最初からはじかれる事態も起きています。郊外の団地の住民には確かに移民出身者が多い。

報道で、暴徒と移民を単純に結び付けて説明しているケースがありましたが、それは間違いです。スラム化した郊外の団地から集まって来た若い世代が、略奪を行い暴徒化したのは、移民の問題ではなく、貧困と差別の問題が起点です。略奪はデモともなんら関係ないのに結びつけて報じられ、デモ本来の姿をゆがめてしまった。

略奪行為の背景に、若者が遊び気分で店を襲うのか、と唖然とされたかもしれません。デモに便乗し社会混乱を作り出そうとする人々の思考と行動も、想像を超えていたかもしれません。今回の出来事はフランス社会の現状を思いがけず浮かび上がらせました。フランス国民にデモ自体は理解され支持を集めていますが、破壊と略奪は支持も共感もされていないことを最後にお伝えしておきます。


説明はよくわかりましたが、希望がみえないです。フランスはどうなるのでしょう?アメリカも気になりますが、、、

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