幹細胞を用いた治療は安全か?

山中伸弥教授ら、加齢黄斑変性に対するiPS細胞を用いた治療の安全性を立証

以下は、記事の抜粋です。


京都大学iPS細胞研究所(京大CiRA)は、滲出型加齢黄斑変性の患者を対象として、iPS細胞由来網膜色素上皮細胞を用いた細胞治療が安全に施行できることを支持する結果を得たと発表した。

同研究グループは、既存の治療では十分な効果が得られていない患者の皮膚の細胞よりiPS細胞を誘導し、さらにRPEを分化してシートを作製し、新生血管の抜去後にその自己iPS細胞由来網膜色素上皮細胞シート(iPS-RPEシート)を網膜に移植するという方法を構想。規定の品質試験に加えて、全ゲノムおよび全エクソーム解析を行った。

2014年9月に患者の1人(女性)に移植を実施したところ、1年後の評価において、腫瘍形成、拒絶など認めず、新生血管の再発もみられなかったという。移植手術前の視力を維持しており、安全性試験としての経過は良好であった。その後1年半経過した現在も、腫瘍形成や拒絶反応はみられていない。

2例目(男性)に関しては、移植手術は延期されており、また、法改正に伴い同臨床研究は一旦エントリーを終了している。実施は1例となったが、今回の結果より、iPS細胞由来網膜色素上皮細胞を用いた細胞治療が安全に施行できることが支持されるということだ。


山中伸弥氏は、「今回の加齢黄斑変性での研究は、iPS細胞を使った治療を安全に行うことができることを示した重要な成果です。」と語っているそうです。

元論文のタイトルは、”Autologous Induced Stem-Cell–Derived Retinal Cells for Macular Degeneration(日本語訳:黄斑変性に対する自家人工多能性幹細胞由来網膜細胞)”です(論文をみる)。

ところが、同じNew England Journalに幹細胞を使って失敗した論文が並んで掲載されています。以下は、その論文を紹介した記事です。元論文のタイトルは、”Vision Loss after Intravitreal Injection of Autologous “Stem Cells” for AMD(日本語訳:加齢黄斑変性に対する自家「幹細胞」硝子体内注射後の視力障害)”です(論文をみる)。


幹細胞使った治験で女性3人失明、米

以下は、記事の抜粋です。


米フロリダ州で、脂肪細胞由来の幹細胞を目に注入する治験を受けた女性患者3人が失明していたことが3月15日に発表された報告から明らかになった。

失明したのは進行性の眼疾患「黄斑変性症」を患っていた72~88歳の女性3人で、2015年にフロリダ州の医療機関で「乾燥型黄斑変性症における細胞の硝子体内注入の安全性と効果を評価する調査」と題した治験を受けていた。

この治験は米国立衛生研究所(NIH)が運営する治験や臨床試験に関する情報提供サイト「ClinicalTrials.gov」に掲載されていた。

しかし、3人は治験を受けた直後から網膜剥離や出血などの合併症に悩み、結果的に視力を完全に失ったという。


上の2つは同じような研究に思えるかもしれませんが、まったく違うレベルのものです。日本の論文は、巨大な国家予算を惜しげもなく投入し、慎重の上にも慎重を期して行われた実験的治療の経過報告ですが、アメリカの論文はいわゆる「幹細胞治療」を受けた犠牲者についての報告です。

記事に書かれているように、脂肪由来幹細胞が黄斑変性症に関わる網膜細胞に成長するかどうかを調べた研究はまだほとんどなく、問題の治験で使用された手法が視力回復を助けるという科学的根拠はほとんどありません。アメリカでは、このようないかがわしい脂肪細胞を用いた「幹細胞治療」が様々な病気に対して行われているようです。

この記事を書くまで知りませんでしたが、日本でも「脂肪由来幹細胞」を用いた「幹細胞豊胸術」を行っているクリニックがあるようです。「脂肪から幹細胞を抽出し、活性度を高めてから脂肪と混ぜて注入する」という説明がついていました。脂肪だけ注入するのとどれぐらい違うのでしょうか?

iPS細胞を用いた加齢黄斑変性症治療は国家重点戦略ともいえるプロジェクトでさえ、ようやく1例で「効果」ではなく「安全性」が確認された段階です。「幹細胞」を用いた「治療」には気をつけましょう。

 

コメント

  1. あ* より:

    「アメリカでは、このようないかがわしい脂肪細胞を用いた『幹細胞治療』が様々な病気に対して行われているようです」か、日本は、米国サル真似が大好きなので、後追いをしそうですね。

    「安全性」の立証は、そう簡単ではないことが殆どであり、
    「洲本5人刺殺」でも、精神鑑定では内容が相反するもの2つ出されたものの、「薬害であったことは誰も争おうとしなかった」そうです。
    http://ameblo.jp/raingreen/entry-12258957579.html

    既に、米国でも Christopher Krummさんが実父を矢で射て殺害しましたし、日本でも
    http://bit.ly/SaseboJiken
    を引き起こしていますので、
    精神科医や心理職も「真人間」になる必要がありますね。さもなければ、更生
    http://bit.ly/rehabilitare
    ができません。

    米国では、「こじらせ女子」型PTSD( http://bit.ly/kojiraseGirls )が米国のお家芸である「オーバーキル」を大学でも実践し、
    http://bit.ly/HuntsvilleShooting
    などを実行しています。このようなことを止めるには、
    PTSD現象学を人類史レベルで進めることが不可欠でしょう。

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