ヒスタミンは「アレルギー物質」ではありません

園児らにアレルギー症状 イワシからヒスタミン検出
以下は、記事の抜粋です(太赤字はブログ著者による)。


東京都は7月31日、東久留米市の「下里しおん保育園」で給食を食べた園児ら29人に、口の周りが赤くはれるなどのアレルギー症状が出たと発表した。イワシの焼き魚からアレルギー物質のヒスタミンが検出されたため、集団食中毒と断定。同園を4日間の食事の供給停止処分にした。

都によると、給食は7月30日昼に提供。3~6歳の園児60人と職員5人が食べたところ、約3時間以内に園児28人、職員1人に症状が出た。イワシやマグロなどの赤身魚は常温で放置したり、冷蔵でも長期間保存したりすると、付着した微生物がアミノ酸を分解し、ヒスタミンを生成する。

園では、北海道の加工業者から仕入れたイワシを冷凍庫で約1カ月間保存していたといい、解凍の方法などに問題がなかったか、保健所で調べている。


消費者庁のサイトに書かれているように、「アレルギー物質」とは”allergen”の日本語訳で、アレルギー反応をひきおこす抗原になる物質です。

食品の中で明らかに特定された原材料をアレルギー物質を含む「特定原材料等」として指定しています。現在、特定原材料等は27品目あり、えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチンが挙げられています。ヒスタミンは、アレルギー反応をひきおこす抗原にはならないので、アレルギー物質ではありません。

ヒスタミンは、我々の身体の中にも存在する低分子の生理活性物質で、マスト細胞とよばれる細胞に多く含まれています。アレルギー反応がおこると、マスト細胞から大量のヒスタミンが放出されます。放出されたヒスタミンは、神経や血管に直接働いて、痒み、血管透過性亢進、蕁麻疹などをひきおこします。イワシにも生理活性物質として、常に少量は存在しています。

大量のヒスタミンを摂取すると、同じような症状がおこります。上の記事の場合、イワシに付着した微生物がヒスチジンからヒスタミンを大量に作ったために、それを食べたヒトにヒスタミンによるアレルギー類似症状が出たのでしょう。これは「ヒスタミン食中毒」とよばれる中毒で、アレルギーと異なり、抗体をもつ特定のヒトだけではなく、誰にでも症状が出ます(論文をみる)。

上の太赤字の部分は「アレルギー症状をひきおこす大量のヒスタミンが検出されたため」が正しいと思います。

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