笑気ガス(亜酸化窒素、N2O)でうつ病が改善

ある気体を吸ったらうつ病が改善、麻酔薬の副作用から発想
以下は、記事の抜粋です。


ワシントン大学ピーター・ナジェル氏らの研究グループが、Biological Psychiatry誌で2014年12月8日に報告している。

麻酔薬で「ケタミン」や「笑気」という薬がある。脳にある「NMDA受容体」という部分に効果があり、NMDA受容体拮抗薬というタイプの薬だ。ケタミンは、治療の効かないうつ病に対して症状を抑える効果を持っている。

研究グループは、笑気の成分である「亜酸化窒素」もうつに効果を持つと想定し、既存の治療の効かないうつ病患者20人を対象として、ニセの気体と比較する試験を実施した。ランダムにグループ分けし、一方のグループは、効果が期待できる亜酸化窒素50%と酸素50%を混ぜた気体を吸ってもらう。もう一方のグループは、効果の期待できない窒素50%と酸素50%を混ぜた気体を吸ってもらった。

それぞれ1時間吸ってもらった上で、「ハミルトンうつ病評価尺度21項目版」と呼ばれる検査で24時間の変化を評価した。

亜酸化窒素を吸ったグループでは全体として症状が改善しており、4人は症状が半減、3人では症状が消失した。ニセの気体では1人だけが症状が半減したと言ったものの改善はほぼなかった。いずれも有害な効果はなかった。


元論文のタイトルは、”Nitrous Oxide for Treatment-Resistant Major Depression: a Proof-of-Concept Trial”です(論文をみる)。

ケタミンも笑気ガス(亜酸化窒素、N2O)もNMDA受容体拮抗薬であり、ケタミンには抗うつ作用があるので、笑気ガスも試してみたという単純な実験ですが、相手が難治性のうつ病だけに興味深い報告だと思います。

ケタミンがうつ病の症状を改善することは、関連記事で紹介したことがありますが、ケタミンが日本で麻薬及び向精神薬取締法に基づく規則により麻薬指定されている非常に使いにくい物質であるために、うつ病の治療法として普及するのは難しいと考えていました。

しかし、もしも笑気にケタミンと同程度の抗うつ作用があるのなら、普及する可能性があるし、他のNMDA受容体拮抗薬が新規抗うつ薬として登場する可能性もあると思います。今後の展開を注目したいと思います。

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ケタミンにうつ病の症状を軽減する効果

コメント

  1. taniyan より:

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    tak先生、お早う御座います。
    何時も専門分野の記事、判り安く解説下さり有難う御座います。
    今年も楽しく拝読させて頂きたく宜しくお願い致します。
    先生におかれましては今年もより良いお年でありますよう祈念申し上げます。

  2. やす より:

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    使ってみたいです。
    今後も続報など、どうぞよろしくお願いします。

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