12人死亡の小児禁止鎮静剤、20施設で投与?

12人死亡の小児禁止鎮静剤、20施設で投与
以下は、記事の抜粋です。


東京女子医大病院で、集中治療室での人工呼吸中の小児患者に投与が禁止されている鎮静剤「プロポフォール」の投与後に小児患者12人が死亡した問題に関連し、全国の少なくとも20の医療施設が同様の条件下でこの鎮静剤を使っていたことが 13日、日本集中治療医学会の調査で分かった。

調査は、同学会の専門医研修認定施設や小児集中治療室がある病院など計307か所を対象に実施。106施設(回答率35%)から回答があった。

それによると、約2割に当たる20施設が、禁止されている条件下でプロポフォールを使ったことがあると回答。このうち、年齢や体重によって使用基準を定めているのは4施設、投与時間の上限(6~24時間)を設定しているのは4施設だった。使用時に親など親権者から同意を得ているのは3施設(15%)にとどまった。


東京女子医大はこの事件を契機に、理事会で学長の解任が決議されるなど大変な状況になっていますが、それとは別に上記のようなセンセーショナルな記事によって、貴重な薬物である「プロポフォール」が使いにくい状況が生まれつつあります。子宮がんワクチンのケースと同様、表面に現れない「マスコミ報道による犠牲者」が出る可能性が高くなっています。今度の犠牲者は若い女性ではなく、子供です。

記事のタイトルにある「12人死亡の小児禁止鎮静剤」ですが、以下に説明するように、あまりにもセンセーショナル過ぎます。

1.吉岡理事長の発表では、「過去5年間にプロポフォールを投与された63人の子どものうち12人が死亡していた。」という内容で、死因がプロポフォールなのか、もともとの病気や敗血症などによるものかは明らかではありません。しかし、読売は「12人殺した」とほぼ同じ意味で使っているようです。

2.「小児禁止鎮静剤」のところですが、プロポフォールの添付文書では、「小児の集中治療における人工呼吸中の鎮静」、日本麻酔科学会のガイドラインでは、「小児への長期大量投与」が禁忌であるとされています。プロポフォールを子どもに使うことが全面的に禁止されているわけではありません。この定義でも、「短時間の集中治療でも禁忌なのか?」や「どの程度の時間と量なら長期大量投与か?」は説明されていません。

プロポフォールは、小児の鎮静に広く使用されています。代わりの薬物(ミダゾラム、デクスメデトミジンなど)もありますが、作用機序や効力も異なります。最初は短時間で終わる予定の処置が、長時間におよぶことも医療現場では珍しいことではないので、上のようなセンセーショナルな記事が出回ると、プロポフォールが使われるべき状況でも使われなくなる可能性があります。関連学会の的確かつ明確な対応を望みます。

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