免疫抑制作用を持たないシクロスポリン誘導体がHIVに対する自然免疫と抗ウイルス反応を引きおこす

HIVが体内で身を隠す「透明マント」を発見
以下は、記事の抜粋です。


エイズウイルス(HIV)が人間の免疫システムを発動させることなく感染・増殖し、細胞内で姿をくらませるために使う「透明マント」のような役割を持つ物質を特定したとする研究論文が、Nature誌で11月6日に発表された。

HIVは、免疫システムで重要な働きを担う白血球にとりつき、体内の防御システムに気づかれることなくしばらく潜伏し、増殖する。科学者らはこれまで、この仕組みの解明に取り組んできた。

University College LondonのGreg Towers氏らは、とりついた細胞の中でHIVが「味方に引き入れる」分子2種類を特定した。HIVはこの分子を使い、体内の防御システムから自身を守り、免疫反応を遅らせるという。

チームは次に、臓器移植時の拒絶反応を防ぐために使われる免疫抑制物質シクロスポリンを基に、試験薬を作製。これを使った結果、ウイルスがこの2つの分子を「マント」として使うことを阻害できたという。


元論文のタイトルは、”HIV-1 evades innate immune recognition through specific cofactor recruitment”です(論文をみる)。

研究者らは、cofactors cleavage and polyadenylation specificity factor subunit 6 (CPSF6) という因子、あるいはNup358とCypAというシクロフィリンと反応できない変異ウイルスは、NF-κBとIRF3の核移行を介する自然免疫反応と抗ウイルス反応を誘導してしまうので、ヒト単球由来マクロファージ中で増殖できないことを発見しました。

これらを上の記事では「透明マント」とよんでいます。また、シクロフィリンにはシクロスポリンが結合することに着目し、シクロスポリンおよび既に開発されていた免疫抑制作用を持たないがシクロフィリンに結合するシクロスポリン誘導体を用いて「マント」を阻害する実験を行ったのだと思います。

免疫抑制作用を持たない、つまりカルシニューリン活性は阻害しないがシクロフィリンに結合するシクロスポリン誘導体が、エイズ予防薬として日の目をみるかもしれません。

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