結核菌ゲノムと薬物耐性

結核菌ゲノムと薬物耐性
以下は、記事の抜粋です。


世界のさまざまな地域の結核菌株の全ゲノム塩基配列解読が、4つの独立した研究で行われ、薬剤耐性の出現に関する新たな知見が得られた。

Maha Farhatたちは、結核菌の主要な6つの系統と一連の薬剤耐性表現型が含まれる結核菌株の全世界コレクションに由来する123菌株について、全ゲノム塩基配列解読と解析を行った。そして、菌株間の進化的類縁関係を利用して耐性マーカーの探索を行うための新しい方法を開発し、39の薬剤耐性領域候補を新たに同定した。一方、Lijun Biたちは、中国の結核菌株161種の全ゲノム塩基配列解読を行い、薬剤耐性に関連する領域候補のリストを作成した。

David Allandたちは、in vitroでエタンブトールを投与した結核菌株のゲノム塩基配列解読を行い、63例の臨床分離株により解読結果の妥当性を示した。

Inaki Comasたちは、259菌株のゲノムを解析し、結核菌とヒト宿主の遺伝的多様性と進化に関する新たな知見をもたらした。解析結果は、結核菌群が約7万年前にアフリカで出現し、アフリカからの人類の移動に伴って伝播したことを示唆している。


Farhatたちは、新しい薬剤耐性遺伝子領域を39個報告していますが、その中16個は”PE/PPE”とよばれるmycobacteria特有でゲノムの約1割を占める機能不明の遺伝子群に属していました。また、薬物の排出、遺伝子の修復・複製・組換え、細胞壁合成などの機能に関与すると思われる遺伝子の他、12個は機能未知でした。これらの領域がどのようなメカニズムによって薬剤耐性に関わっているのかは、今後の研究で明らかになることが期待されます。

結核菌感染は既に終焉したかのように思っている読者も多いと思いますが、アフリカからアジアの発展途上国を中心としたHIV感染の広がりに伴って急速な勢いで増加しています。このHIV結核合併感染の大半は薬剤耐性結核菌によるものだそうです。タイやインドネシアでも何度もこの問題を耳にしました。実は、多くの先進国では新たなエイズ患者は減っている中で、日本だけはHIV感染が増加しているそうです。他人事ではありません。HIV感染の予防と薬剤耐性メカニズムの解明は我々にとっても重要な課題です。

コメント

  1. やす より:

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    私の父は若いころ重い結核で闘病したそうですが、私にとっては今はもう時代が違うという感覚で、あまり関心がありませんでした。
    でも結核は今もあなどれないのですね。
    とても勉強になりました。

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