BRCA1に変異をもつ日本人女性の頻度は?

乳房切除のアンジェリーナ・ジョリー、次は卵巣摘出を予定
以下は、記事の抜粋です。


先日、予防的乳房切除手術を受けていたことを明かした女優のアンジェリーナ・ジョリーが、次は卵巣摘出手術を受ける予定であるとPeople.comが報じた。

彼女は5月14日に、がん抑制遺伝子の「BRCA1」に変異があり、乳がんになるリスクが87%、卵巣がんになるリスクが50%と診断されていたと公表。「この事実を知り、わたしはできる限りリスクを軽減させることを決意しました。そして予防的乳房切除手術を受けることにしたのです。両胸から始めたのは、卵巣がんよりも乳がんになるリスクの方が高く、手術もより複雑だったからです」と自ら説明していた。

医師たちは、卵巣摘出手術を検討している女性たちに、40歳になるまでに手術を受けるように勧めることが多いという。彼女は来月4日に38歳の誕生日を迎える。

彼女は今年2月に乳房を切除し、4月に再建手術を受けていた。公表に踏み切ったのは「がんになる可能性におびえて暮らす女性たちに、乳房切除手術という選択肢があることを知ってほしい」という思いからだという。


BRCA1は、遺伝性乳がん患者の50%程度に変異が認められ、変異を持つ女性は生涯において乳がんを発症する確立が50-85%、卵巣がんを発症する確立が12-60%だと報告されています。

BRCA1は様々な細胞プロセスで働いていますが、DNA修復における役割が特に良く知られています。これは、BRCA1がRAD51というDNAの2本鎖切断を修復する酵素を活性化するためと考えられています。BRCA1変異により、DNA修復機能が低下して遺伝子の病気であるがんが生じやすくなるのは理解しやすいと思います。

ここまでは少し調べれば簡単にわかるのですが、BRCA1に変異をもつ日本人女性の割合がどれぐらいなのかがわからなかったので、調べてみました。

少し古いデータですが、アメリカに住む5人種を調べた結果、アジア系アメリカ人が一番低かったと報告されています(論文をみる)。実際、この論文では、ヒスパニックが最も高く3.5%、非ヒスパニック系白人が2.2%なのに対して、アジア系アメリカ人は0.5%だと報告されています。もしも、新しく発表された数字をご存知の読者の方がおられたらお教え願います。一方、大阪大学のサイトをみると、「家族性乳癌および家族性乳癌・卵巣癌に於けるBRCA1、BRCA2の変異の頻度は日本人と欧米人とではあまり差がないと考えられた」と書かれています。

これらは矛盾した報告ではなく、日本人女性の乳がん罹患率は約18人に1人で、アメリカでは約8人に1人なので、日本では家族性も非家族性もどちらの乳がんも少ないのでしょう。BRCA1変異ポジティブの場合には、予防的両側乳房切除手術と卵巣摘出手術が最も有効な対応のようですが、日本での保険適応は認められていません。

いずれにしても、”Mr.& Mrs. Smith”を観た時には、まさか彼女が両側の乳房を切除するとは思いませんでした。

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