HIV感染児の治療、nevirapineよりもefavirenzが効果大

HIV感染児の治療、不人気な薬剤が実は効果大 研究
以下は、記事の抜粋です。


エイズウイルス(HIV)に感染した子どもの治療においては、現在広く使用されており価格が低めのネビラピン(nevirapine)よりも、エファビレンツ(efavirenz)の方が高い効果が得られることを示した論文が、4月30日の米国医師会雑誌(JAMA)に掲載された。800人超の子どもを対象とした研究により、3~16歳の感染児の初期治療で、ネビラピンよりもエファビレンツの方が高いHIV抑制効果があることが分かった。

この研究は、HIV感染児を対象とした第一線の治療について行われた初の大規模な比較研究とされており、HIV感染児のほとんどを抱える貧困地域での治療に影響を与える可能性がある。

世界に300万人以上いるHIV感染児の90%を抱えるサハラ以南アフリカなどの貧困地域では、エファビレンツとネビラピンの両方がWHOによって推奨されている。

論文の主執筆者のElizabeth Lowenthal氏によると、「ネビラピンはエファビレンツより値段が安く、小児向けの薬剤として広く出回っており、選択されることが多い」。「しかし、われわれの研究ではエファビレンツのほうが良い結果をもたらした」

研究で得られた証拠から「小児向け治療ガイドラインの改訂は極めて妥当」と話すのはペンシルベニア大のRobert Gross氏。だが一方で、資金が限られた抗レトロウイルス治療において、エファビレンツをより現実的な選択肢にするための、コスト面での努力が必要だとも述べている。


元論文のタイトルは、”Association Between Efavirenz-Based Compared With Nevirapine-Based Antiretroviral Regimens and Virological Failure in HIV-Infected Children”です(論文をみる)。論文によると、治療失敗率(ウイルス増殖の抑制に失敗した率)がefavirenzでは13.5%だったのに対して、nevirapineでは26.4%でした。ガイドラインの改訂は妥当だと思います。

Nevirapine(ビラミューン®)は、非核酸系の逆転写酵素阻害剤(NNRTI=Non-Nucleoside Reverse Transcriptase Inhibitor)の中で初めてFDAの認可を受けた薬です。200mg錠の薬価は967.4円、一日の維持量は400mgです。 Efavirenz(ストックリン®、MSD)も同じNNRTIに分類される薬で、200mg、600㎎錠の薬価はそれぞれ649.4円と1863.7円、一日の維持量は600㎎です。ということで、日本で服用する場合、薬物治療に要する費用はほぼ同じです。

薬剤耐性HIVインフォメーションセンターのサイトによると、NNRTIは現在、nevirapine、efavirenz、delavirdine、etravirineの4薬剤が認可されており、日本ではefavirenzが群を抜いて多く使用されているそうです。「不人気」という表現も日本では誤りです。また、同じNNRTIでもefavirenzとnevirapineとでは逆転写酵素への結合の仕方が異なり、efavirenzは結合すると外れない薬ですが、nevirapineは結合が可逆的だそうです。このような違いが臨床効果の違いに反映されているのかもしれません。

これらのNNRTIは、長い血中半減期と優れた治療効果を発揮するため、プロテアーゼ阻害剤に代わり多剤併用療法の要となっているそうです。また、2008年12月にには、新しいNNRTIであるetravirineが承認され、既存のNNRTIと交叉耐性を示さないためにその効果が期待されています。

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