後発薬大国インド、スイス製薬大手の特許認めず

後発薬大国インド、スイス製薬大手の特許認めず
以下は、記事の抜粋です。


インド最高裁が、スイス製薬大手「ノバルティス」の抗がん剤の特許を認めない判決を下し、波紋が広がっている。

特許を安易に認めていけば、成分が同じ、より安価な薬の普及を阻害し、貧困層の健康に悪影響を及ぼすとするインドや発展途上国と、特許の侵害は新薬開発の停滞に直結するという欧米の大手製薬会社の主張は平行線をたどるばかりだ。

特許は各国の特許法に基づき取得の是非が判断される。ノバルティスは2006年、抗がん剤「グリベック」の特許申請がインドで却下されたことを不服として提訴。最高裁は4月1日、グリベックは「既存薬の化学構造を変えただけで新薬とは言えない」との高裁判決を支持した。同社インド法人のランジット・シャハニ氏は「知的財産権が保障されないインドへの投資には慎重にならざるを得ない」とインドからの撤収もほのめかして不満をあらわにした。

インド政府やインドのジェネリック医薬品製造会社は、判決を「既存薬と変わらない新薬の特許を取得して、高値で独占販売を続ける欧米流に待ったをかけた」と歓迎する。インドは、年間輸出額100億ドル超と世界トップ級のシェアを誇るジェネリック製薬業界を抱え、05年まで医薬品の特許を認めていなかった。同年、医薬品に一定の特許を認めることを義務づける世界貿易機関(WTO)の協定に基づき特許法を改定した後も、特許を認めることに一貫して慎重だ。


イマチニブは、臨床使用が認められた最初のキナーゼ阻害型分子標的薬です。フィラデルフィア染色体をもつ慢性骨髄白血病(CML)において、BCR-ABL融合蛋白質のチロシンキナーゼ活性を阻害して高い抗腫瘍作用を発揮します。医療を画期的に変えた薬の一つに数えられています。このような薬が「既存薬の化学構造を変えただけで新薬とは言えない」で片付けられるのであれば、どんなキナーゼ阻害薬も同じ判決に終わるでしょう。

日本の場合、イマチニブは1錠あたり3,200円強です。1日4錠服用すると自己負担3割として、1日あたり4,000円弱。1ヶ月では、約116,000円ですが、高額療養費補助制度の適用を受けたとしても、毎月約44,400円の自己負担になります。

途上国の多くの人々はこのような費用を負担することはできません。日本でも一部の患者さんは、インド製のイマチニブのジェネリックを個人輸入しています。HIV/エイズ治療薬の抗レトロウイルス(ARV)薬も同様で、大半はインド製です。欧米の製薬メーカーにとって、「掟破り」のインドの存在は、最大の脅威かもしれません。

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