最も処方の多い不眠症治療薬はマイスリー®(ゾルピデム)

最も処方の多い不眠症治療薬はマイスリー QLife社調査
以下は、記事の抜粋です。


QLife社が、全国6044人を対象に行った「不眠症治療ならびに不眠症治療薬に関する大規模調査」で、処方された薬剤を尋ねたところ、最も多い回答はマイスリーで20.1%だった。10%を上回ったのは、マイスリーほかデパス(14.3%)、レンドルミン(13.4%)、ハルシオン(11.4%)。薬剤名を「覚えていない」という患者は3.1%にすぎなかった。何らかの治療薬が処方された結果、74.2%が症状が解消された(ほぼ解消含む)と回答した。

不眠の経験があるのは42.0%だったが、その中54.9%は医療機関を受診していなかったと回答。その理由として最も多いのが「深刻ではない/そのうち治る」(53.4%)、次いで「不眠症治療薬を服用することに抵抗がある」(25.3%)だった。受診経験者、未受診者ともに半数が不眠症治療薬に対する副作用や依存性の問題などネガティブなイメージを持っていた。

不眠は、うつ病などが隠れているケースがあるほか、肥満、高血圧など生活習慣病を招くおそれも指摘されており、軽く考えるのは禁物。また、受診し治療薬の処方で、7割強が症状が解消されたとの今回の調査結果もあり、さらなる啓発の必要性を浮かび上がらせる結果となった。


GABA-A受容体は、5個のサプユニットからなる5量体の塩素イオンチャネルを形成しています。遺伝子レベルでは、17種類のサブユニット(α1-6,β1-4,γ1-3,δ,ε,π,θ)があります。

GABA-A受容体は、少なくとも各1個のα、βおよぴγサブユニットをもっています。5個のサブユニットの組み合わせが多様な受容体をつくると考えられています。下図参照(薬理学電子教科書より)。

ジアゼパムなどのベンゾジアゼピン(BD)系薬物は、GABA-A受容体に結合しその作用を増強します。BDが受容体に結合するためには、γ2サブユニットが必須で、さらにα1、α2、α3またはα5サブユニットが必要です。

ゾルピデムは、α1サブユニットを含むサブタイプアセンブリをもつGABA-A受容体のBD結合部位(αサブユニットとγ2サブユニットのインターフェイスに存在)に高い親和性を示しますが、α2、α3あるいはα5サブユニットをもつGABA-A受容体に対する親和性は低いです。

α1サブユニットをもつGABA-A受容体は、ラットの場合、脳のほぼすべての領域に存在し、全GABA-A受容体の40%以上を占めています。このタイプのGABA-A受容体が催眠作用と鎮静作用の発現に関与すると考えられており、ω1(BZ1)受容体と呼ばれていたものの分子レベルでの実体だと思われます。

一方、α2、α3またはα5サブユニットをもつGABA-A受容体は、抗不安作用、抗痙撃作用、筋弛緩作用などの発現に関与していると考えられています。これがω2(BZ2)受容体と呼ばれていたものだと思われます。

このようにゾルピデムは、睡眠作用は強いが抗不安作用は少ない、そして依存性も少ないと考えられていましたが、逆にα1への結合が依存の発生に必須でした。つまり、ゾルピデムに依存性が少ないというのは誤りでした。

さて、上記の記事についてですが、「受診経験者、未受診者ともに半数が不眠症治療薬に対する副作用や依存性の問題などネガティブなイメージを持っていた。」事実は、かなり多く(半数)の人々が依存性などの副作用を認識していることを示唆しており、私はむしろ良いことだと思います。不眠に対しては、環境や生活習慣の改善によって原因を取り除く努力をした後で睡眠薬を服用すべきです。継続して服用することが望ましいこともあるプラバスタチン(メバロチン®)などとはまったく異なります。

睡眠薬には依存性以外にも、持ち越し効果、筋弛緩作用、前行性健忘、奇異反応などの副作用があります。安易に処方・服用しないことの啓発も重要だと思います。

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コメント

  1. taniyan より:

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    tak先生。
    度々済みません。
    自分にはマイスリー、ドラール、は全く効きません、増量しても。
    それから先日、日経でEszpicloneの素晴らしさを特集してたので個人輸入してみたのですが思わぬ副作用で断念、1mgでも翌日への持ち越し、倦怠感、何もやる気がしない、まるで鬱状、何度か試して確信。
    個人差があるので決めつけはできませんが自分には使えない。
                 taniyan

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