「平均」の意味、大学生の24%が理解せず?

「平均」の意味、大学生の24%が理解せず

以下は、記事の抜粋です。


大学生の24%が「平均」の意味を正しく理解していないなど、基礎的な数学力、論理力に大きな課題があることが、日本数学会(理事長・宮岡洋一東京大教授)が実施した初の「大学生数学基本調査」で明らかになった。

ゆとり教育の影響のほか、少子化による大学全入時代の到来で入試の難易度が下がったことなどが、理由として指摘されている。

調査は昨年4月から7月にかけ、国公立大、私立大計48大学で実施。主に入学直後の学生5934人が協力した。調査では小中学校で学ぶ内容を中心に、論理的な文章の読解や記述力、基本的な作図力を問う5問が出題された。

その結果、全問正答した学生は、わずか1.2%だった。「偶数と奇数を足すとなぜ奇数になるか」を論理的に説明させる中3レベルの問題の正答率は19%。小6で学ぶ「平均」についても、求め方は分かるが、「平均より身長が高い生徒と低い生徒は同じ数いる」などの正誤については誤答が目立ち、中堅私大では半数が誤答だった。


毎日の記事によると、宮岡教授は「『ゆとり教育』と学力試験を課さない推薦入試の増加が学力低下に拍車を掛けた」とみているらしい。また、日経の記事によると「大学は入試をできる限り記述式にすべき。中学・高校でも証明問題を解かせるなど、論理の通った文章を書く訓練を積む必要がある」ともしているらしい。

日本数学会やマスメディアの見解は正しいでしょうか?調査票を見てみました。下の問題が最初の問題です。

1-1 ある中学校の三年生の生徒 100 人の身長を測り、その平均を計算すると 163.5cm になりました。この結果から確実に正しいと言えることには○を、そうでないものには×を、左側の空欄に記入してください。
(1) 身長が 163.5 cm よりも高い生徒と低い生徒は、それぞれ 50人ずついる。
(2) 100人の生徒全員の身長をたすと、163.5 cm×100 = 16350 cm になる。
(3) 身長を 10 cm ごとに「130 cm 以上で 140 cm 未満の生徒」「140 cm 以上で 150 cm 未満の生徒」・・・というように区分けすると、「160 cm 以上で170 cm 未満の生徒」が最も多い。

正解例をみると(1)と(3)が×で、(2)が○だそうです。私は(2)も×だと思います。平均値は、最初に有効数字の桁数を決め、合計値をnで割った値を四捨五入して求められることが多いので、生徒全員の身長の合計は、16350ではなく16351の可能性もあります。問題には、「確実に正しいと言えることには○を」と書かれているのですから、正解は×のはずです。

この問題を間違えたからといって、「『平均』の意味を正しく理解していない」と断言し、以前のデータと比較せずに「正解率」の低さを「ゆとり教育」や推薦入試の普及と結びつける数学会やマスメディアこそ、論理性のなさを反省すべきだと思います。

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