幹細胞注射でマウスの“若返り”に成功

幹細胞注射でマウスの“若返り”に成功

以下は、記事の抜粋です。


年老いたマウスが再び“若返る”可能性が明らかになった。ピッツバーグにあるマクゴーワン再生医療研究所のJohnny Huard氏によると、老化が早く進む状態にした高齢のマウスに若いマウスの筋幹細胞を注射すると、寿命が3倍に延びたという。

「プロジェリア症候群」(早老症の一種)のモデルマウスが実験に用いられた。このマウスは誕生して約21日で死ぬ(通常の寿命は約2年)。研究チームは早老マウスの筋幹細胞中に、分化の遅い「疲れた状態」の幹細胞を発見。次に健康なマウスを調べると、同様の欠陥が認められる幹細胞が見つかったという。

これらの幹細胞が老化に関係しているか確認するため、早老マウスに若い健康なマウスの幹細胞を注射したところ、注射したマウスの寿命は平均で71日間と大幅に伸びた。また、長生きしただけでなく、以前より健康になっていたという。

次に、早老マウスに遺伝子マーカーでマークした幹細胞を注射、移動を追跡した。意外にも、マウスの臓器内では数個の幹細胞しか見つからなかった。そこで、「幹細胞は何らかの“アンチエイジング物質”を分泌している」という仮説を検証した。

フラスコの一方の側に早老マウスの幹細胞を、もう一方に通常の若いマウスの幹細胞を入れた。細胞同士は接触しないように膜で分離された。数日後、早老マウスの幹細胞は“若者”のように振る舞い始めた。分化のスピードが速くなったのだ。

「年老いた幹細胞の欠陥を改善する謎の物質が、正常な幹細胞から分泌されていると考えられる。その物質を特定できれば、人間にとって重要なアンチエイジング効果のあるタンパク質を発見できるかもしれない」とHuard氏は語る。

Huard氏によると、健康なマウスでの寿命延長効果を確認する必要があるという。ヒトに応用する場合は、幹細胞を20歳頃に採取しておき、50~55歳になったら同一人物の身体に戻すという方法が考えられる。失禁や心臓疾患を対象とする幹細胞療法は既に存在するため、「この手法を臨床で使える日は遠くない」とHuard氏は述べる。


元論文のタイトルは、”Muscle-derived stem/progenitor cell dysfunction limits healthspan and lifespan in a murine progeria model”です(論文をみる)。

早老マウスモデルとして用いられているのは、除去修復交差相補群1(excision repair cross-complementation group 1;ERCC1)タンパク質をコードする遺伝子のノックアウトマウスです。この遺伝子産物は、エンドヌクレアーゼのサブユニット色素性乾皮症因子(XPF)と複合体を作っており、多くのDNA修復メカニズムで重要な役割を果たしています。また、非小細胞肺癌に対するシスプラチンベースの補助化学療法の有効性に影響する遺伝子としても知られています。

ERCC1-XPFを完全にノックアウトしたマウスの寿命は約1ヶ月だそうで、筋幹細胞を含めて全身の細胞が極めて速い老化を示すそうです。また、ERCC1-XPFを正常の約10%しか発現しないように遺伝子操作したマウスでは、寿命が正常マウスの約1/3の7ヶ月で、dystonia(筋失調症)、trembling(振戦)、kyphosis(脊柱後弯症)などの老化症状を早期に示すそうです。

上の記事では良くわかりませんでしたが、「早老マウスに若い健康なマウスの幹細胞を注射」というのは、腹腔内への注射です。それで、下図のようにノックアウトマウスの寿命が延長し(a)、ERCC1-XPF低発現マウスの老化症状の出現が遅くなる(b)というのは、本当に驚きです。「若さのエキス」は何か?知りたいですね。

コメント

  1. taniyan より:

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    tak先生
    お早う御座います、何時も興味津々記事感謝です。
    夢みたいな話だけど、自分ももう少し遅い時代に生まれてたら恩恵に与られたかも。
    いくらあがいてもどうにもならない年齢が残念。
                        taniyan

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