米研究者、老化現象を遅らせる方法発見か?

米研究者、老化現象を遅らせる方法発見か―マウスで実験

以下は、記事の抜粋です。


一部の老化現象を遅らせる方法が見つかったかもしれない。マウスを対象とした実験で、分裂しなくなった細胞を除去することで、白内障やしわの原因となる脂肪減少といった現象を遅らせたり、防いだりすることができたという。

若くて健康な細胞の大半は、体の組織や臓器を適切に機能させ続けるために分裂を続ける。しかし、その分裂はやがて止まって老化と呼ばれる状態になり、他の細胞に取って代えられる。細胞の老化はヒトの一生を通じて起こる現象だが、このような老化細胞を体から除去する能力は年齢を重ねるとともに衰えるため、このような細胞が体内にたまっていく。

メイヨー・クリニックの研究チームは、老化した細胞をターゲットとして死滅させる薬を使って、老化プロセスの一部を本質的に凍結できることを発見した。この研究結果は2日付のネイチャー誌に掲載された。この研究は、極めて初期の段階にあるものの、老化細胞を除去すれば、年齢を重ねながらも健康を維持する1つの方法である可能性を示している。

論文筆者のジャン・バンデューセン氏は、「老化細胞を除去できれば、老化に関連する各種の病を個別にではなく一つのグループとして治療できるようになるかもしれない」と語った。研究チームは、老化細胞が全体の細胞に占める割合はほんのわずかで、高齢者の組織の約5%ないしそれ未満だが、それが幅広い影響をもたらしている可能性があると指摘している。


研究者らは、老化マーカーとしてp16Ink4aに注目しました。p16Ink4aは、CDK阻害因子(CDKI)の1つとして知られており、増殖能を有する正常な細胞においては通常発現は極めて低いですが、正常細胞が分裂寿命に達した場合には発現が著しく上昇することがわかっています。

研究者らは、老化細胞を除去するために、AP20187という薬物を全身投与すると全てのp16Ink4aを発現する細胞をアポトーシスさせるようなマウスを作成しました。用いたマウスは野生マウスではなく、BubR1遺伝子に変異があり、多くの組織で加齢とともにp16Ink4aの発現が亢進することがわかっている加齢モデルマウスです。

このようなマウスにAP20187を投与すると、脂肪、骨格筋、眼球などのp16Ink4aが加齢変化に関わっている組織では、p16Ink4a発現細胞の除去は加齢性変化の開始を遅延させました。さらに、ある程度加齢プロセスが始まってからAP20187を投与した場合でも、加齢に関連する病気の進行を弱めることが確認されました。

これらの結果から、研究者らはp16Ink4a発現老化細胞の除去が老化を遅らせ寿命を延ばすと結論しています。一方、脳腫瘍、膵癌、食道癌などでp16Ink4aの高率な欠失・変異などが報告されるなど、p16Ink4aが癌抑制遺伝子として機能するという報告もあります。むやみにp16Ink4a発現細胞を減らすと、老化は防げるけれどもがんが発生しやすくなる可能性があるかもしれません。

論文には、細胞をロシグリタゾン(rosiglitazone)で処理すると、PPARγの活性化を介してp16Ink4aの発現が強く誘導されるという結果も書かれています。この結果は正しいと思いますが、日本で広く使われているピオグリタゾン(pioglitazone、アクトス®)という糖尿病治療薬も同じ作用機序です。これらの糖尿病治療薬が老化を早めるという話はないと思います。話が少し単純すぎる感じがします。

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