慢性閉塞性肺疾患(COPD)へのチオトロピウム吸入製剤、死亡リスクを52%上昇

Mortality associated with tiotropium mist inhaler in patients with chronic obstructive pulmonary disease: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials

以下は、論文要約の抜粋です。


目的:慢性閉塞性肺疾患(COPD)の症状改善のために用いられるチオトロピウムのミスト吸入製剤の長期使用に関連する死亡リスクをシステマチックに調べる。

データと方法:2010年7月までに、Medline、Embase、製薬会社の臨床試験登録、米食品医薬品局(FDA)ウェブサイトおよびClinicalTriales.govに登録された臨床試験の中から、COPD患者を対象としたランダム化並行群間試験で、チオトロピウム溶液またはプラセボをミスト吸入器を用いて30日以上投与しており、死亡率を報告した研究を選んだ。固定効果メタ解析を用いて全死因死亡の相対リスクを推定した。

結果:5件の臨床試験が上の選択条件を満たした。チオトロピウムミスト吸入薬は死亡リスクの有意な上昇と関係していた。全死因死亡は、チオトロピウムミスト群の3686人中90人、プロセボ群の2836人中47人で、相対リスクは1.52だった。10μgの相対リスクは2.15、5μgは1.46だった。

結論:本メタ解析は、監督規制機関のチオトロピウムミスト吸入薬に関する安全上の懸念の根拠となるCOPD患者における死亡リスクの52%増加という結果を示した。


COPDは、喫煙習慣が主な原因となる肺の生活習慣病で、ガイドラインによると、「タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じた肺の炎症性疾患である。呼吸機能検査で正常に復すことのない気流閉塞を示す。気流閉塞は末梢気道病変と気腫性病変が様々な割合で複合的に作用することにより起こり、進行性である。臨床的には徐々に生じる労作時の息切れと慢性の咳、痰を特徴とする。」と定義されています。

薬物治療としては、長時間作用性β2刺激薬/吸入ステロイド配合薬や長時間作用性抗コリン薬が使われています。長時間作用性抗コリン薬は、最も効果を示す気管支拡張薬と考えられており、長期的には、気流閉塞の進行や死亡率を抑制する可能性が報告されています。代表薬はチオトロピウム(スピリーバ®)です。

しかし、以前からチオトロピウムがCOPD患者の心血管リスクを上昇させる可能性が指摘されていました。また、チオトロピウムには、粉末薬を吸入器にセットし噴射ガスを用いてエアロゾル化するタイプと、ミスト吸入器を用いて吸入液を霧状にするタイプの2つの剤型があり、最近登場したミスト吸入タイプでは、より高濃度のチオトロピウムに曝露する可能性があることから、ミスト吸入薬使用の死亡リスクをメタ解析したというのが本論文です。

心血管リスクをもつCOPD患者というのは少なくないと思われますが、このような患者でのチオトロピウム、特にミスト吸入タイプの使用は慎重にしなければならないというのが結論です。

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