心不全合併冠動脈疾患に対する冠動脈バイパス術は生存率を改善せず、必要ないかもしれない

Bypass surgery for heart failure might not be needed

以下は、記事の抜粋です。


オハイオ州立大学の研究グループが行った臨床試験結果によると、心不全合併冠動脈疾患患者に対するバイパス手術は、薬物治療だけの場合の生存率を改善しないことが明らかになったそうです。

研究では冠動脈がブロックされて心不全に陥った患者1200名以上が、薬物治療だけのグループと薬物治療+バイパス術の2群にランダムに振り分けられました。

5年間追跡した結果、これら2つの群での死亡率には有意差がなかったそうです。具体的には、薬物治療だけを受けた602例中死亡は244例、薬物治療+バイパス術610例中死亡は218例でした。しかし、心血管系による死亡数だけの比較や死亡数と心血管系による入院数の和で比較すると、薬物治療+バイパス術群の方が有意に優れていたそうです。


元論文のタイトルは、”Coronary-Artery Bypass Surgery in Patients with Left Ventricular Dysfunction”です(論文をみる)。

心臓を栄養する冠動脈が動脈硬化や血栓によって閉塞する冠動脈疾患は、心不全や左室機能不全の基礎疾患としてよく知られています。論文には、このような冠動脈疾患や心不全に対する薬物治療の有効性は確立しているがバイパス手術(CABG)の有効性は確立していないと書かれています。私は確立していると思っていたので非常に驚きました。

CABG施行後、30日間以内は薬物治療単独群で良好な治療成績、30日以降ではCABG施行群で良好な傾向を示しました。このように、CABGには施行早期のリスクがあることが明らかになりました。これらを総合すると、長期間のベネフィットと短期間のリスクを総合し、case by caseでCABGの是非を判断するということのようです。

また、同じ臨床試験でPETやエコーで調べた心筋生存性もCABG施行の指標にはならない、という結果もNEJMで報告されました(論文をみる)。

「脇窩リンパ節郭清は早期乳がんの生存率を改善しない」という話題もそうですが、これまで経験と勘に基づいて良いとされていた外科手術に対してもエビデンスによる厳しい評価が始まったようです。

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