進行性メラノーマ治療薬Yervoy® (ipilimumab)を米国FDAが認可

Drug Approved for Late-Stage Melanoma

以下は、記事の抜粋です。


3月25日、Yervoy® (ipilimumab)という薬が、皮膚がんの中でもっとも悪性な進行性メラノーマの治療薬として米国FDAによって承認された。米国では昨年、68,130例がメラノーマと診断され、8,700例がメラノーマにより死亡した。FDAによると、Yervoy®は、がんと戦う免疫系を抑制するCTLA-4とよばれる分子の働きをブロックする。

臨床試験は、676例のメラノーマ患者に対して行われた。これらは、FDAによって現在承認されているすべての治療に反応しなかった患者ばかりである。これらの患者のがんは、体中に広がっているか、外科的に切除できない状態だった。

試験の結果、Yervoy®投与を受けた患者は平均10ヶ月生存したが、投与されなかった患者は平均6.5ヶ月しか生存しなかった。

最も頻繁な副作用は、疲労、下痢、発疹、小腸炎だった。投与された患者の約13%に重症~致死的な自己免疫反応が認められた。FDAは、このような潜在的なリスクについて、医師と患者に周知させることを指示している。


FDAが言及している臨床試験の結果は、すでに論文として発表されています。この論文については、以前の関連記事1で紹介したので、詳細はそちらをご覧ください。

ipilimumabは、上記のように患者の腫瘍に対する免疫を非特異的に増強する薬で、メラノーマを治癒させる薬ではありません。しかし、上記のように生存期間を有意に延長し、投薬された患者の20%以上が2年以上生存したそうです。

問題なのはその価格です。ブリストル・マイヤースによると、3ヶ月間に4回の静注投与を行う治療1クールあたりのコストは、12万ドル(約100万円)だそうです。

患者の1割以上に認められる自己免疫反応による副作用は、他の化学療法薬や分子標的薬にはないもので、治療には副腎皮質ステロイドが用いられるそうです。また、がんを抑制するメカニズムも異なっており、化学療法薬が比較的短時間にがん細胞死を誘導するのに対して、この薬物は患者の免疫システムの増強に何週間もかかることがあるので、即効性は期待できません。

関連記事2-4に書いたように、近い将来、B-RAF阻害薬などの新しいメラノーマ治療薬が市場に出て来る可能性は高いと思います。FDAの承認獲得レースではトップを切ったYervoy® (ipilimumab)が今後どうなるのか、注目したいと思います。

関連記事
1. 転移性メラノーマ患者の延命に抗CTLA-4抗体(イピリムマブ、ipilimumab)が有効
2. メラノーマは、PDGFRβの発現増あるいはN-RAS変異によってB-RAF阻害薬耐性を獲得する
3. BRAF変異メラノーマでのRAF阻害薬はシグナル経路を80%以上阻害しないと臨床的に有効ではない
4. 転移性メラノーマの変異により活性化したBRAFの阻害

Yervoy® (ipilimumab)(The New York Timesより)

コメント

タイトルとURLをコピーしました