メラノーマは、PDGFRβの発現増あるいはN-RAS変異によってB-RAF阻害薬耐性を獲得する

Melanomas acquire resistance to B-RAF(V600E) inhibition by RTK or N-RAS upregulation

以下は、論文要約の抜粋です。


B-RAFキナーゼの活性化変異(V600E)は、ヒトの悪性腫瘍の約7%に、そしてメラノーマでは約60%に認められる。B-RAF(V600E)陽性メラノーマ患者に対する、新規クラスI RAF選択的阻害薬PLX4032は、当初の臨床使用経験では、これまでにない80%という抗腫瘍効果が示されたが、初期の良い反応の後にしばしば薬剤耐性が生じた。

B-RAF阻害にたいして耐性を獲得するメカニズムについての仮説としては、B-RAF(V600E)の二次変異、MAPKの再活性化、生き残るための別経路の活性化などが考えられている。今回我々は、PLX4032に対する耐性獲得は、 B-RAF(V600E) の二次変異によるのではなく、PDGFRβの発現量増加あるいはN-RASの変異のどちらかによって生じることを示す。

B-RAF(V600E)陽性メラノーマ細胞由来株、患者由来の生検組織および短期培養細胞の一部において、PDGFRβのmRNAやタンパク質およびそのチロシンリン酸化の誘導がPLX4032への耐性獲得の主要な特徴であることが明らかになった。

これらとは別に、突然変異によりN-RASが活性化されており、PLX4032処理でMAPK経路の有意な再活性化が引き起こされたサンプルもあった。

PDGFRβあるいはN-RASをノックダウンすると、それぞれのPLX4032耐性細胞の増殖が抑制された。逆に、PDGFRβあるいはN-RAS(Q61K)を過剰発現すると、PLX4032に感受性を示す細胞株がPLX4032耐性を獲得した。


実際の患者からのメラノーマサンプルでは、11例中4例にPDGFRβの発現増が認められたそうです。一方、N-RASの活性化変異(Q61K)がみつかった患者は1例です。これまで想定されていたB-RAF(V600E)の二次変異は、どの症例にもみつかりませんでした。

N-RAS(Q61K)の場合、抗リン酸化ERK抗体で調べると、MAPK経路の活性があがっていて、PLX4032で処理しても強く抵抗することは比較的理解しやすいです。また、この場合はMEK(MAPKK)阻害薬に感受性であることも良くわかります。

PDGFRβの発現増が認められる場合は、PDGFRβのノックダウンでPLX4032感受性が回復するので、発現増が耐性の理由であることは良いとしても、何故PDGFRβの発現増がおこるのかは不明です。

また、PLX4032耐性を示す臨床例の大半は、PDGFRβの発現増もN-RASの活性化変異も示さないようですが、これについても耐性のメカニズムは不明のままです。

既にスタートしているかもしれませんが、これらの疑問に答えるためには、個々の腫瘍の全ゲノム配列を決める必要があると思います。

本年の8月にB-RAF阻害薬PLX4032のメラノーマに対する素晴らしい臨床効果が報告(関連記事1)されてからまだ4ヶ月足らずですが、もう耐性メカニズムについての論文が報告されました。タイムリーですが、上記のように不十分です。何かの理由で、とりあえず今までにわかっていることを急いで論文にしたように感じました。

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