院外心停止に対して、非専門家が行う胸部圧迫単独CPRは、人工呼吸を伴うCPRよりも生存率が高い

Chest Compression–Only CPR by Lay Rescuers and Survival From Out-of-Hospital Cardiac Arrest

以下は、論文要約の抜粋です。


背景:胸部圧迫単独による心配蘇生法(CPR, cardio-pulmonary resuscitation)は、院外心停止に対して、標準的な胸部圧迫+人工呼吸によるCPRと同等に有効かもしれない。

目的:院外心停止患者の生存率について、胸部圧迫単独によるCPRと標準的な方法によるCPRを比較する。

方法:2005年1月1日から2009年12月31日まで、アリゾナ州の18歳以上の院外心停止患者に対して、5年間の前向き観察的コホート研究を行った。救急隊が到着するまでの間、その場に居合わせた非専門家が行うCPRと退院記録を多変数ロジステック回帰分析法を用いて解析した。主要転帰は退院時の生存とした。

結果:心停止をおこした患者中、779名は専門の医療関係者によってCPRが行われたので対象から除外し、4415例を解析対象とした。この中、2900例はCPRが行われず、666例が標準法、849例が胸部圧迫単独によるCPRを受けた。生存率は、それぞれ、 5.2%、7.8%、13.3%だった。2005年から2009年にかけて、CPR施行率は28.2%から39.9%に、胸部圧迫単独CPRの全CPRにおける比率は19.6%から75.9%に、心停止患者全体の生存率は3.7%から9.8%に増加した。

結論:院外心停止患者に対する処置として、胸部圧迫単独CPRは、人工呼吸を伴う標準的CPRよりも生存率が高い。


過去に2回ブログ記事を書いた胸部圧迫単独CPRについての論文ですが、これはアメリカで行われた最初の大規模臨床試験結果の報告です。また、これまでの報告では胸部圧迫単独CPRは標準的CPRと同等以上ということでしたが、今回の報告は胸部圧迫単独CPRの方が優れていることを示しています。

ただし、乳幼児や池や川で溺れた人などの場合は、標準的なCPRの方が良いそうです。

心停止がおこった場合、最も酸素を要求する臓器である脳への血流を早く再開することが重要です。標準法の場合、素人はmouth-to-mouthを行うまでに少し躊躇するので、脳への血流再開が遅れます。これが、胸部圧迫単独CPRの方が標準的CPRよりも救命率が高い理由だと思われます。

1回あたりの救命率が高いことも重要ですが、素人でもとっつきやすいためにCPRの実施率が上がり、結果として心停止患者の救命率が2倍以上も増えたことがすごいと思います。

アリゾナ州は2005年からYouTubeや公開講座などのあらゆる機会をとらえて、胸部圧迫単独CPRのプロモーションを行ったそうです。そろそろ日本でも、大々的にプロモーションをしても良いと思います。

上の論文を書いたアリゾナ大のEwy教授が胸部圧迫単独CPRを実演しています。

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