ウイルスのゲノム解析で伝染経路がわかる

新型コロナ日本感染ルーツとウイルスの種類:中国のゲノム分析から
以下は、記事の抜粋です(一部はブログ著者によって改変しています)。


中国の研究者らが新型コロナウイルスのゲノム配列に関して暫定的な研究結果を発表した。それにより日本で感染しているウイルスのルーツや種類も見えてきた。

ウイルス経路マップーー日本人感染者のルーツとウイルスの種類が見える
2月21日、中国科学院の郁文彬氏等が「新型コロナウイルス肺炎の進化(変異)と感染を全ゲノムデータを用いて解読する(Decoding evolution and transmissions of novel pneumonia coronavirus (SARS-CoV-2) using the whole genomic data)」という論文(以下、論文)を中国科学院の学術論文プレプリント・サーバーChinaXivに投稿した。

論文は93件のウイルスサンプルの遺伝子情報を調べて比較し、以下のような変異と感染の経路マップを作成している。経路マップの読み方をご紹介しよう。

ウイルスの種類を左上の国・地域と中国のいくつかの代表的な地区名に沿って調査し、その起源と伝染ルートを描いている。次にウイルスの大きな枠での類似性を、Group AからEに大別している。

日本は青色で区別され、Group AのH53(2例)とH52(1例)、Group CのH51 (1例)とH32(1例)が日本の患者だ。論文の詳細なデータによれば、Group AのH53とH52:東京、Group CのH51:京都、H32:愛知となっている。

Group Aは(武漢滞在歴がある)深セン経由のウイルス。Group Cは湖北省武漢市の海鮮市場由来のウイルス。「H51」は、「広東省」で突然変異した亜種。愛知県の「H32」は武漢の海鮮市場由来のものである。

グループ別のウイルスの起源と感染経路
では、グループ別にウイルスの起源と感染経路を見てみよう。

Group A

「H13」を中心として広がったウイルスで、これは深セン(広東省、緑色)においてのみ発見された種類だ。

「H13」はどのようにして生まれたかというと、コウモリから発見されたウイルス「bat-RaTG13」が、何やら確定できない動物を介して「mv1」ウイルスとなった。ここは明確には辿られてないので、細い線で結ばれている。もっと薄い線で結ばれているのが「mv1」と「H13」だ。「H13」はこの「mv1」が進化(変異)したものと考えられている。

Group B

中心は「H3」。これは武漢でのみ1例発見されている。しかし海鮮市場に行った事はないという。「H3」は、4つの4分の1の大きさの円から成り立っており、その小さな4色の円の右上(座標軸の第一象限)に注目するとHubei(湖北)の赤色だ。武漢市は湖北省の省都なので、赤になっているが、これは「1点」で、武漢のみである。その斜め右上の方向に線があり、濃いピンクの少し大きな丸がある。これはアメリカのワシントンである。「H38」というウイルスが、ワシントンでのみ発見されている。

ところが「H13」(深セン)も「H38」(ワシントン)も、武漢に滞在した経験があるという。となると、やはり武漢に関係していることになる。

一方、残りの3つの「4分の1の大きさの円」は、「台湾、オーストラリア、ベルギー」なので、逆に、「H3」型ウイルスは、武漢では流行っていなかったことにもなる。

Group C

これこそが爆発的に伝染していった感染源だ。少々不鮮明だが、「H1」は「武漢市華南海鮮市場」で見つかったウイルスだ。大規模感染を起こし、世界中に広がっていった。「H1」はGroup Cに所属するが、ここから進化してGroup DやGroup Eなどの、言うならば「亜種」に変異している。

変異は飛行機で浴びる放射線が主原因か
論文は変異したウイルス保持者の足跡を調べることによって、変異の多くは飛行機に乗ったことにより上空の放射線を浴び、それによってゲノム配列が異なってしまった可能性が高いと分析している。ウイルスは二重螺旋型の遺伝子配列であるDNAではなく、一重螺旋型のRNAなので、変異をそのままコピーし易い性質を持っているという。

変異は最終的には毒性が弱くなり、宿主となる人間が死なない方向に動いて長く人間と共存していく方向(人間界に定着する方向)に変異してウイルス自身がいつまでも生き延びるようになる傾向にあるだろうが、しかし「H3」から「H1」のように、爆発的に強力化する場合も途中ではあり得る。多くの人間(宿主)が死んでも、それを遥かに上回る数の人間に宿って(感染させて)、そこで生き延びていくという方法だ。これが武漢の大規模感染である。


記事にも書かれているように、全世界で93例しかサンプルが取れてない段階の研究なので、まだ確定された結論が書かれている訳ではありませんが、このようにして世界中のウイルスを分析すれば、伝染経路が明らかになると思います。

また、日本でもあちこちのウイルスの配列を決めることで、誰から誰に移ったとか、未知のクラスターがどれくらいありそうかなどの情報が得られると思います。日本のDNAシーケンサーは余っているはずなので、是非やって欲しいと思います。

これまでも、コロナウイルスはゲノムサイズが約30kbと大きいために変異しやすいとされていましたが、新型も同じみたいです。ということは、ワクチンの作成が難しい可能性があります。自然の変異の結果じた毒性が非常に弱い株を見つけることができれば、医療資源の乏しい国や地域ではそのまま生ワクチンとして使えるかもしれません。

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