がん免疫療法の効果有無、事前に判定?

がん免疫療法の効果有無、事前に判定 ノーベル賞の本庶氏らグループ発見
以下は、記事の抜粋です。


がん免疫療法の一つである免疫チェックポイント阻害薬PD1抗体の有効性を判定する手法を見つけたと、京大の本庶教授らのグループが発表した。一部のがん患者に劇的な効果がある一方で、無効な患者も多いPD1抗体投与法の改善につながる可能性がある。本庶教授や茶本准教授らは治療法として改善するため有効な手法を探してきた。

グループはPD1抗体を投与した肺がん患者47人について、血液の液体成分にある247の代謝産物と、リンパ球の一つT細胞に関わる57の成分を解析した。その結果、特定のT細胞の割合など4項目の測定で、PD1抗体の効果の有無が9割以上と従来より高い正解率で判定できた。

茶本准教授は「血液中の成分を分析する手法なので患者への負担も少ない。まだ技術的な課題はあるが、今後も実用化に向けて検討を重ねたい」と話した。


元論文のタイトルは、”Combination of host immune metabolic biomarkers for the PD-1 blockade cancer immunotherapy”です(論文をみる)。以下は、論文の結果の抜粋です。


4種類の代謝産物、馬尿酸 (hippuric acid), ブチリルカルニチン (butyrylcarnitine), シスチン (cystine)と グルタチオンジスルフィド(glutathione disulfide) の変動は、ニボルマブ(オプジーボ®)に対する反応性と良い相関を示した (AUC = 0.91)。同様にミトコンドリアの活性化に関連するなどの4種類のTリンパ球マーカーはさらに良い相関を示した (AUC = 0.96)。


ニボルマブ(オプジーボ®)は腫瘍免疫に関係するTリンパ球を活性化する抗体(チェックポイント阻害剤)なので、Tリンパ球のマーカーの一部に変化が認められるのは当然ですが、これらのマーカーや患者の反応が血液中の代謝物とも相関しているところが興味深いです。ちなみに、反応の良い患者では、ニポルマブ投与後に、血中ブチリルカルニチンは低下し、その他の3代謝物は上昇するそうです。

投与後の患者の反応でその後の治療に対する反応を予測するのですから、記事のタイトル中にある「事前に判定」というのは誤りだと思います。さて、藁にもすがる思いのがん患者が1回の投与で血中代謝物の反応が良くないからという理由で投薬の中止に同意するでしょうか?

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