すべてのがんを治療できる可能性があるT細胞治療が開発された

「がん細胞だけを殺す新型の免疫細胞」をCRISPR-Cas9で開発することに成功
理論的にはすべてのがんに有効な技術が開発されました。以下は、記事の抜粋です。


ゲノム編集技術で「がん細胞だけを識別して殺す免疫細胞」が開発されたと報告されました。

Tリンパ細胞には、T細胞受容体(TCR)と呼ばれる分子が細胞膜上に存在します。このT細胞をつかってがんを治療する「CAR-T細胞療法」は、患者のT細胞を体外に取り出してから、がん細胞の目印を見分けるように遺伝子を改変して培養し、再び体内に戻してがん細胞をやっつけるという免疫療法です。ただし、CAR-T細胞療法は、従来の方法では限られた種類のがんだけにしか効果がないのが難点といわれています。

研究者は、「ほとんどの種類のがん細胞を識別可能なTCR」を備えたT細胞を、CRISPR-Cas9を応用して作り出すことに成功したと報告しました。このT細胞は、健康な細胞を無視しながら、肺・皮膚・血液・結腸・乳・骨・前立腺・卵巣・腎臓・子宮のがん細胞を殺すことができたことが示されたとのこと。また、ヒトの免疫系とヒトのがん細胞を持つマウスにこのT細胞を注入したところ、従来のCAR-T細胞療法に匹敵する効果が示されたと報告しています。

また、メラノーマの患者から採取されて新しいTCRを発現するように改変したT細胞は、患者のがん細胞だけではなく、他の患者のがん細胞にも効果があったことが実験で示されたとのこと。この実験結果は、患者ごとにT細胞を書き換えるのではなく、「普遍的にがんに効果のあるT細胞」を用意できる可能性を示唆しています。

研究の主著者でカーディフ大学医学部のセウェル教授は「このように広範ながん特異性を持つTCRを見つけることは非常に珍しく、これにより普遍的ながん治療への見通しが高まります」と述べています。一方で、セウェル教授はさらなる安全性の試験を行い、新しいTCRを備えたT細胞が確実にがん細胞のみを認識することを示す必要があるとしました。


元論文のタイトルは、”Genome-wide CRISPR–Cas9 screening reveals ubiquitous T cell cancer targeting via the monomorphic MHC class I-related protein MR1″です(論文をみる)。

この治療では、患者自身のT細胞をゲノム編集技術でがん細胞を攻撃するように改変します(下図参照)。その標的は、上の記事に書かれているHLAではなくMR1(Major histocompatibility complex, class I-related)と呼ばれる分子です。このMR1は341アミノ酸からなるタンパク質で、HLAと異なり、すべての人で共通です。通常は細胞表面ではなく、小胞体に存在しているようです。これを標的にすることでがん細胞が死滅するようですので、がん細胞では細胞表面に多く存在するのかもしれません。

今後の問題は、記事にも書かれているように、このように普遍的な分子を標的にする治療法が本当にがん細胞だけを殺して、正常細胞には影響がないことを確認することだと思います。

もう一つの問題は価格です、CAR-T療法はアメリカでは約5,200万円、日本では3,349万円の費用がかかります。それでも適応疾患が少ないので(たぶん)保険適用されました。よく似た方法を使う今回の治療も超高額になることは間違いありません。どんながんにも有効な治療が超高額でかつ保険適用されれば、日本の保険医療システムがどうなるかは火を見るよりも明らかです。

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