科研費593人報告書出さず、57億円交付済み

科研費593人報告書出さず、57億円交付済み

以下は、記事の抜粋です。


国の補助金で科学研究を行いながら、義務付けられている研究成果報告書を提出していない研究者が、今年1月時点で593人に上ることが、会計検査院の調査でわかった。
未提出者に支払われた科研費は57億8253万円に上る。検査院は6月21日、審査・交付業務を担当した独立行政法人「日本学術振興会」に対し、報告書を提出させるよう改善を求めた。

発表によると、問題の補助金は、科学研究費補助金(科研費)で、提出しなかったのは、国公立大や私立大など164校・研究機関の教授や研究者ら。科研費を受けとると、研究終了後、一部の研究をのぞいて報告書を振興会に提出することが義務付けられている。

593人は、全員が提出期限を1年7か月以上過ぎていた。うち14人は期限が約10年過ぎていた。複数の報告書を提出していない研究者もおり、件数は658件。

振興会は2009年度には、過去の研究で報告書を提出していなかった69人にも、新規に科研費を交付していた。科研費の10年度の予算は約2000億円。うち約1300億円分を振興会が、約700億円分を文部科学省が、それぞれ審査や交付業務を行っている。同様の問題では、文科省も1998年に、改善を求められている。

検査院の指摘を受けて、振興会は、658件のうち558件の報告書の提出を受けた。振興会は「対応が不十分だった。今後は報告書がしっかりと提出されるようにしたい」としている。


報告書を出さなければ、次回の申請に影響し採択されなくなると信じていたので、私は科研費の報告書を提出しなかったことはありません。この記事を読んで、私のような小心者ではない研究者がそんなに多いのかと驚きました。

ただ、この読売の記事には書かれていませんが、他新聞の記事によると、「使途の明細を毎年申告する実績報告書だけで済むと研究者が勘違いしていたケースがあったほか、研究者本人から報告書を受け取った研究機関が振興会へ提出せずに倉庫に放置するなど、研究機関側に不備があるケースも多数見つかった。」そうです。

何度も同じような報告書を提出しなければならないので、研究者本人だけではなく、研究機関も忘れてしまうことがあるようです。

会計検査院は、このような事態を「社会へ還元不十分」とコメントしているそうですが、本当にそうでしょうか?

以前、宮川剛さんの記事、「ムダを減らすことはできないだろうか」を紹介しました。その中で宮川さんは、「ずばり、日本の研究業界のシステムにはたくさんのムダがあり、膨大な額の貴重な税金をムダに浪費している側面があると断言します。以下に私が思いついたものをリストアップしてみました。」と書かれています。彼がリストアップしたものの中から報告書に関するものを以下に紹介します。

●各種研究費の申請書・報告書に記載する情報には重複が多く、それぞれの書類のフォーマットが大幅に異なっているムダ。
●研究費の報告書は、大幅削減か廃止すべき。
●研究費の種目の一つ一つが小さく、たくさん申請書・報告書を書かなければならないムダ。

論文その他の成果として発表されたものを、社会還元だと考えることはできないのでしょうか?研究申請の審査においても、報告書ではなく成果や業績を評価することが中心だと思います。

新聞記事では57億円の金がムダに使われたかのような書き方をしていますが、マスコミや会計検査院が問題にしている報告書こそがムダであり、大幅削減か廃止すべきだと思います。

参考記事
科学予算削減に各学会が意見、「ムダを減らすことはできないだろうか」など。

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