転移性メラノーマ患者の延命に抗CTLA-4抗体(イピリムマブ、ipilimumab)が有効。

Improved Survival with Ipilimumab in Patients with Metastatic Melanoma
以下は、論文の要約です。


背景
転移性メラノーマ患者の生存率を改善することは非常に困難だった。この第3相臨床試験では、イピリムマブ(ipilimumab)――cytotoxic T-lymphocyte-associated antigen 4 (CTLA-4)の働きを阻害して、抗腫瘍T細胞の働きを増強する――単独投与、glycoprotein 100 (gp100)ワクチンとの同時投与、ワクチン単独投与の3種類の治療効果を転移性メラノーマ患者において比較する。

方法
切除不能な臨床ステージIIIあるいはIVのメラノーマと診断され、転移性腫瘍に対する前治療を受けているが病気が進行した患者676人をランダムに3:1:1にグループ分けし、それぞれにipilimumab+gp100 (403人)、ipilimumab単独(137人)、gp100単独(136人)を投与した。ipilimumabは、3mg/kg投与され、3週間ごとに4回投与された(induction)。適切と判断された患者は、再度induction治療をうけた。プライマリー・エンドポイントは生存期間とした。

結果
ipilimumab+gp100を投与された患者の平均生存期間は、10ヶ月で、gp100単独投与された患者では6.4ヶ月であった。ipilimumab単独投与では、10.1ヶ月であった。免疫関連副作用は、ipilimumab投与群では10から15%で、gp100単独投与群では3%だった。薬物による死亡は14、免疫関連副作用によると思われる死亡は7名だった。

結論
ipilimumabは、gp100ペプチドワクチンの有無に関わらず、gp100単独投与と比べて、転移性メラノーマとして前治療を受けた患者の延命を改善した。副作用は、重篤で長期にわたる可能性があるが、適切に処置すれば回復可能である。


がん細胞に対する免疫反応を制限する経路についての研究は、非常に発展しています。CTLA-4は、T細胞活性化経路をダウンレギュレートする免疫チェックポイント分子です。ipilimumabは、CTLA-4を阻害する完全ヒト化モノクローナル抗体で、抑制系の抑制により抗腫瘍免疫を活性化するとされています。

アメリカの報道では、転移性メラノーマに対する治療は30年間改善されなかったそうです。ipilimumabは腫瘍に直接作用するのではなく、T細胞を活性化するものですので、メラノーマだけではなく、他の腫瘍にも有効である可能性があります。

下は、この臨床試験結果を扱ったテレビニュースです。この臨床試験の対象患者かどうかはわかりませんが、ipilimumabによるメラノーマ治療が成功し、元気になった患者さんが紹介されています。

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