エーザイとバイオジェンが承認申請中の「認知症薬」は「根治薬」ではない。

エーザイが開発中止の「認知症薬」復活のわけ…株価急騰、世界初の治療薬に高まる期待
エーザイがアメリカのバイオジェンと共同開発していたアルツハイマー病(AD)治療薬の「アデュカヌマブ」を、2020年初めにもアメリカ規制当局に新薬として承認申請すると発表しことでエーザイの株が高騰したそうです。アデュカヌマブのアメリカでの承認申請については既に記事を書いていますので、そちらをご覧ください(記事をみる)。あの麻生太郎財務相も「高齢者が増加していく中で、『いかに安くするか、もっと広げるか、国全体としてどうするか』を諮問会議として考えなければならない」としたそうです(記事をみる)。東洋経済誌の石坂氏は、この記事でアデュカヌマブの中止から復活への理由を以下のように書かれています。


そんな状況の中で今回、エーザイが一度開発を中止した薬剤を一転、申請することになったのはなぜか。

経緯はこうだ。アデュカヌマブの治験では、遺伝子の型や症状の進行度合いなどの被験者の条件、投与用量などがまったく同じ試験が2本行われていた。試験のスタート時期はそれぞれ2015年8月と同年9月で、1カ月の差がある。

そして、2018年12月時点で、決められた一定期間の投与が完了した被験者のデータを分析。その結果、2019年3月に「成功する確率は低い」と第三者機関から判断され、中止に至る。この時の分析で対象になった患者は、全参加者の約半数、1748人だった。

一方、今回は3285人の被験者全員を対象に分析し、決められた一定の投与期間に満たなかった被験者も、統計学の手法で効果を予測することで分析対象のデータに組み入れた。

分析対象となる人数が増えただけで異なる結果が出たのは、「期間の途中で治験内容を変更し、高用量を投与する患者が増えたこと」(エーザイ)だと考えられている。

当初は副作用の大きさから、特定の遺伝子を持つ患者への投与量は少なめに抑えられていた。だが、副作用のコントロールがある程度できるようになったことで、2017年3月から特定の遺伝子を持つ患者への投与量を増加させた。治験終盤には高用量を投与された患者の割合が増えており、最終解析の成績がよくなったというわけだ。


記事でも、「今後の焦点は、当局に申請が受理され、承認にこぎ着けることができるかだ。」と書かれているように、承認されるかどうかは微妙です。

問題は、この抗体医薬がいかにもどんなアルツハイマー型認知症にも効果があるかのように報道されることが多い事です。効果があるとしても生きている神経細胞のアミロイド沈着を軽減するだけで、死んでしまった神経細胞を復活させることはできません

ですので、この記事で書かれている「現在販売されている認知症薬は症状を一時的に緩和するだけで、病気そのものを改善させるアデュカヌマブのような根治薬は存在しない。開発に成功すればエーザイは莫大な収益を手にすることになる。」というのは書きすぎです。「根治薬」ではありません

また、12月に発表予定の詳しいデータを見ないとわかりませんが、これまで同じような薬の臨床試験がすべて失敗したことを考えると、試験対象患者をかなり厳選して可能性がありますので、すべての患者に効果があるとも考えられません。大騒ぎするのはまだ早いと思います。

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