経口第三世代セフェムを使うのは止めよう(前編)

経口第三世代セフェムを使うのは止めよう(前編)
神戸大学の岩田健太郎氏の記事です。昔から権威には媚びないところがとても良いと思います。以下は、記事の抜粋です。


経口第三世代セフェムは使わないほうが良いです。使い道がないからです。以下、拙著『99.9%が誤用の抗生物質』(光文社新書)からの引用です。これをご覧いただければ「使わない」理路は明らかだと思います。

日本の外来でよく用いられているのは、フロモックス®、メイアクト®、バナン®、セフゾン®、トミロン®といった「第三世代」セフェムです。こうした第三世代経口セフェムは、ものすごくたくさん使われています。が、その大多数は誤用なのです。

フロモックス®もメイアクト®もほとんど日本で独占的に売られている抗菌薬で、外国での市場はごくわずかです。フロモックス®は塩野義製薬が出しているセファロスポリン(セフカペン・ピボキシル)ですが、すでに日本では特許が切れており、ジェネリックも販売されています。実際のセフカペン・ピボキシルはもっと使われているということです。

では、世界でほとんど使われていないフロモックス®とメイアクト®が、なぜ世界のマーケットの1位と2位を独占しているのか。なぜ、それが日本でだけ使われているのでしょうか。こういう話をするとすぐに「日本人独特論」が出てきますが、先天的に日本人がフロモックス®やメイアクト®を欠乏(かつ渇望)しているとは思えません。

では、このような経口第三世代セフェムは、どういう場合に医療現場(歯科含む)で使われているのか。

たとえば、「かぜ」に対してです。しかし、そもそもかぜに抗菌薬を用いることは正当化できません。メタ分析では、成人でも小児でも、かぜに抗菌薬を出した群と出さない群を比較した時、症状の改善には差が見られません。また、成人の場合は抗菌薬を出されたほうが倍以上副作用が出る確率が高かったのです。

下気道感染である急性気管支炎も同様で、抗菌薬の効果はプラセボと差がなかったというエビデンスが繰り返し報告されています(Lancet. 2002; 359:1648-54、 Lancet Infect Dis. 2013; 13: 123-9)。

急性中耳炎や急性副鼻腔炎についても多くは抗菌薬なし、対症療法で治療できます。また、もし抗菌薬を使うにしてもアモキシシリンのようなペニシリン系の抗菌薬が第一選択になります。フロモックス®やメイアクト®の出番はありません(Pediatrics. 2013; 131: e964-99, Clin Infect Dis. [Internet]. 2012)。

急性咽頭炎もウイルス性なら抗菌薬は使いませんし、細菌性ならペニシリンが選択肢になります。アメリカ感染症学会(IDSA)は細菌性急性咽頭炎にセファロスポリンを使用しないよう推奨しています(Clin Infect Dis. 2012; 55: 1279-82)。

歯科領域でも予防や治療に抗菌薬がよく用いられています。しかし、アメリカ心臓協会が出したガイドラインでは、ほとんどの歯科の診療では予防的な抗菌薬は出さないよう推奨しています(JADA. 2008;139(suppl 1):3S-24S)。また、用いるとしてもアモキシシリンのようなペニシリン系抗菌薬が推奨されています。

口の中の細菌はグラム陽性菌が多く、グラム陰性菌に強い第三世代のセファロスポリンを用いるメリットはほとんどありません。歯肉炎の治療は歯科治療や局所の抗菌薬療法が推奨され、「飲み薬」は一般には必要ないとされています。また、重症例に対しては口腔内のグラム陽性菌に効果があるアモキシシリンなどが推奨されるようです(Wilder RS, Moretti AJ. Gingivitis and periodontitis in adults: Classification and dental treatment. UpToDate. Last updated Nov 7. 2012)。

歯周病に抗菌薬を用いるかどうかについては議論の余地があるようですが、これまでに臨床研究があるのはアモキシシリンやメトロニダゾールくらいで、ここでもフロモックス®やメイアクト®などの第三世代セファロスポリンの出る幕はありません(山本浩正、歯周抗菌療法、インテッセンス出版、2012)。

毛嚢炎、丹毒、蜂窩織炎といった皮膚・軟部組織感染症(skin and soft tissue infection: SSTI)などの感染症にもフロモックス®やメイアクト®といった第三世代セファロスポリンがよく用いられていますが、こういった感染症もほとんどがブドウ球菌やレンサ球菌といったグラム陽性菌が原因で、第三世代セファロスポリンは理にかなっていません。


以前は、自分の風邪にフロモックス®やその他の抗菌薬を飲んでいる医師も多かったですが、最近は徐々にですが減ってきているようです。風邪の原因はウイルスで、抗菌薬がウイルスには効かないことは皆知っているのですが、二次感染をおそれて飲んでいるのだと思います。しかし、ここに書かれているように、風邪に続いておこる二次感染の多くは第三世代セファロスポリンが無効のグラム陽性菌が原因です。

以上は、前編だそうです。後編が出るのが楽しみです。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする