何度も痛い目に遭う人、脳内物質が不足?

何度も痛い目に遭う人、脳内物質が不足…阪大

以下は、記事そのままです。


何度も痛い目に遭う人は、脳内の神経伝達物質「セロトニン」が不足している――。大阪大社会経済研究所の田中沙織・特任准教授らのグループが、研究結果をまとめた。

借金を重ねる多重債務などの問題行動を解明できる可能性があるという。16日の米科学誌Journal of Neuroscience電子版に発表した。

セロトニンは「トリプトファン」というアミノ酸などから脳内で作られ、精神的な活動に欠かせない。トリプトファンを含む飲料を男性21人に飲ませて実験。濃さは「過剰」「通常」「不足」の三つに分けた。

脳内でセロトニンへ変化した後、選んだ図形に応じて報酬が変化するゲームを1人660回実施。図形は8種類で、賞金がもらえるものと罰金を払うものがある。賞金と罰金のペアごとに示し、賞金はより多く、罰金はより少ないものを選ぶよう促した。

より少ない罰金を選択する問題で、セロトニンが不足している人は、正解が3問後(約10秒後)に示される場合、ほかの状態の人より正解率が低かった。(2009年12月17日11時56分 読売新聞)


本当にわけのわからない記事です。記者は研究の内容を理解しているのでしょうか?

元の論文は、”Serotonin Affects Association of Aversive Outcomes to Past Actions”です(論文をみる)。

神経伝達物質のセロトニンは、トリプトファンというアミノ酸から合成されます。トリプトファンは体内で合成できない必須アミノ酸です。このため、口から摂取するトリプトファン量を制限すると、脳内のセロトニン量が低下します。

お金を扱った4種類のゲーム――すぐに報酬を得る、後で報酬を得る、すぐに罰則を与える、後で罰則を与える――を3種類の被験者――トリプトファンを与えない、標準量、過剰量のトリプトファンを摂取した――にさせた結果を分析しました。

トリプトファンを与えない被験者では、標準量や過剰量のトリプトファンを与えた被験者よりも、後で罰則を与えられるゲームでの学習が遅かった(成績が悪かった)。他のゲームでは同等であったということです。

このことから、どうして「借金を重ねる多重債務などの問題行動を解明できる可能性がある」のかわかりません。また、普通の食生活をしていれば、脳内セロトニンが減少することはないと思いますので、セロトニン不足が多重債務の原因とも思えません(セロトニン不足対策をみる)。

抗うつ薬のSSRIは、セロトニンの神経終末への再取り込みを抑制し、シナプス間隙でのセロトニン濃度を増加させます。このような実験にどのような影響を与えるのでしょうか?

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