科学捜査研究所(科捜研)は警察組織の一部で、それほど科学的でもありません

沢口靖子さんが主演する『科捜研の女』は、1999年の放送開始から19年続いている人気ドラマです。科学を武器に、凶悪化・ハイテク化する犯罪に立ち向かう「真実を見逃さない」研究員が活躍する舞台が科学捜査研究所(科捜研)です。

しかし、実際の科捜研には、品質管理体制もなく、臨床検査技師の配置も医師の選任もありません。科捜研は、各都道府県警の一組織として、検察側の「科学的証拠」を提供する「御用組織」なのです。警察の一部であるその職員の提出する「鑑定」が「真実」よりも「検察側の都合」に近いのは明白です(記事をみる)。

このような重大な利益相反問題を抱える科捜研ですが、その鑑定は、裁判では「権威あるもの」として重んじられ、有罪の動かぬ証拠として採用されています。こうして科捜研は、起訴されると99.9%、否認しても99.5%という異様に高い日本の有罪率を支えています。

科捜研がいかに「真実を見逃す」非科学的な組織であるかが良くわかる事例が最近無罪判決が出た乳腺外科医の事件です。以下の2つは江川紹子氏による事件に関する記事です。できれば、2つともお読みください。


乳腺外科医への無罪判決が意味するもの
以下は、科捜研について書かれた部分の抜粋です。


検察側は、鑑定の結果、微物に大量の医師のDNAが含まれているとして、これを(被告の医師が患者の胸を)舐めた証拠とみていた。しかし、大量のDNAが検出されたとする根拠は、科捜研研究員が実験ノートに当たるワークシートに記載した数字のみ。研究員は、ワークシートを鉛筆で記入しており、必ずしも時系列でない記載もあったうえ、消しゴムで消して書き直した部分もあった。

裁判所は、このような記載の仕方を、「刑事裁判の基礎資料の作成方法としてふさわしくない」と厳しく批判。さらに、微物に含まれるDNA量が重要な問題になっていることを知りながら、科捜研がDNA抽出液の残りを廃棄し、再鑑定ができなくなった点についても「非難されるべき行為」と断じた。


乳腺外科医のわいせつ事件はあったのか?~検察・弁護側の主張を整理する
以下は、科捜研について書かれた部分の抜粋です。


鑑定で使用したのはガーゼから抽出したDNA抽出液の一部。その残りが保存されていれば、再鑑定も可能だが、これもすでにない。研究員は残液を「2016年の年末の大掃除の時に廃棄した」と証言している。

この時期には、被告人が裁判で否認していることが明らかになっており、期日間整理手続が行われることも決まった。鑑定人が証人として呼ばれ、裁判で証拠が厳しく吟味されることは、十分予想できただろうに……。


上の記事から明らかなように、科捜研は検察や警察に都合の良い結果を「鑑定結果」として裁判所に提出するための警察の一部なのです。

刑事事件の鑑定は、科捜研だけではなく大学の研究室に依頼されることもありますが、検察側に都合の良い結果を出してくれる研究室に依頼が集中します。研究室にとっても鑑定に伴う収入は、「外部資金」として貴重です。ここでも利益相反問題がありますが、放置されています。

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