ゾフルーザの懸念

新薬ゾフルーザの利点と残された懸念
以下は、記事の抜粋です。


今シーズンが本格的なデビューとなる新たな抗インフルエンザ薬のゾフルーザ。1回の内服で治療が完結する利便性の高さとアドヒアランスに優れる点が最大の利点だ。一方、アミノ酸変異株の出現という懸念があり、治療における位置付けは定まっていない。

ゾフルーザには留意すべき点もある。それは、日本感染症学会インフルエンザ委員会が10月1日に発表した「ゾフルーザの評価と使用に関する提言」が治療戦略上の位置付けを見送った理由でもあるが、治療後にアミノ酸変異のあるウイルスが高率に検出されたことだ。小児を対象とした国内第3相試験では、ゾフルーザ投与患者のうち、投与前後に塩基配列の解析が可能だった77例のうち18例(23.3%)で、アミノ酸変異株が検出されている。変異株を認めたのは、全てA型インフルエンザの患者だった。また、成人と12歳以上の小児を対象とした臨床試験でも、370例中36例(9.7%)で、同じような変異株が検出されている。

ここでいうアミノ酸変異は、インフルエンザウイルスの複製を担うRNAポリメラーゼで見つかった。RNAポリメラーゼはPA、PB1、PB2の3つのサブユニットから構成されるが、そのうちPAの遺伝子の38番目のイソロイシン(I)がトレオニン(T)に置き換わっていた。PAにはゾフルーザが作用するキャップ依存性エンドヌクレアーゼ活性があるが、この変異ウイルスが出現したことで、インフルエンザウイルスのゾフルーザに対する感受性は約50倍低下していた。


これらのアミノ酸変異が「耐性株」と呼べるかどうかはまだわかりません。というのも、ゾフルーザにしてもタミフルにしても罹病期間を1日短縮するだけの効果しかないからです。

インフルエンザウイルスは比較的変異が速いウイルスと言われています。今のところは1か所の変異で済んでいますが、ゾフルーザが乱用される状況が続くと第2、第3の変異が蓄積して「本当の耐性株」が出現するリスクも高くなります。

また、ウイルスの増殖を抑制するメカニズムを考えると、「せっかく」感染しても免疫が得られず、何度も同じインフルエンザに罹る可能性も高くなりそうです。こうしている間に、日本で流行するほとんどのA型ウイルスが「ゾフルーザ耐性」になるかもしれません。

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