ゾフルーザ®の二重盲検ランダム化比較試験で、薬が効きにくくなるウイルスの遺伝子変異が約1割に生じていた

成人のインフルエンザに対するバロキサビル マルボキシルの効果―合併症のない例での二重盲検ランダム化比較試験
以下は、記事での第Ⅲ相試験の結果についての抜粋です。


日本で2018年2月23日に製造承認された新規の抗インフルエンザ薬、バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ®)に関する2つの二重盲検ランダム化比較試験の結果がNEJM誌上に発表された。本剤はウイルスのポリメラーゼを構成する3つのサブユニットのうち、polymerase acidic protein(PA)を選択的に阻害するプロドラッグであり、エンドヌクレアーゼ阻害薬に分類される。A型、B型いずれにも効果を示し、動物実験では肺内のウイルス量を早期に減少させること、さらに人体内では長い半減期を有する(49~91時間)ことが判明していた。

外来患者をバロキサビル(体重80kg未満では40mgを1回投与)、オセルタミビル(75mgを1日2回、5日間)、プラセボの3つに割り付けた。インフルエンザと診断した対象患者は、38℃以上の発熱と、全身症状の少なくとも1つ、呼吸器症状の少なくとも1つを有する者とした。開始後は症状、所見を追うとともに、鼻咽腔のウイルス検出と感受性検査、ペア血清による抗体検査、安全性の確認として血液・尿検査を行った。プライマリーエンドポイントは、すべての症状が消失する、あるいは軽度になってから既定の時間が過ぎるまでの期間とした。

試験では1,064人が解析できたが、80%以上はH3N2ウイルスによるものであり、症状軽減までの時間は、バロキサビル群53.7時間、オセルタミビル群53.8時間、プラセボ群80.2時間であった。ウイルスの減少速度はバロキサビルで大きかったが、感染性のウイルスが検出された期間はそれぞれ24時間、72時間、96時間であった。なお本試験に関連すると思われる有害事象はそれぞれ4.4%、8.4%、3.9%であった。またバロキサビル低感受性に関与するとされるPAの遺伝子変異(I38T/M/F)を生じたのは、第II相では2.2%、第III相では9.7%であった。

バロキサビルは、インフルエンザにおいて1回投与でも有意に有症期間を短縮し、さらに速やかにウイルス量を減少させることができることが裏付けられた。なお本検討にはいくつかの興味ある点が見受けられる:(1)投与開始が早いほうが成績がよい、(2)オセルタミビルよりも早くウイルス量は減少するが、有症期間は同等である、(3)ウイルス量の早い減少は感染伝播を減らす面ではやや有利かもしれない。しかしバロキサビル投与によって低感受性関連変異を来すと、ウイルス排泄は長引き、有症期間も長くなってしまう(30%ではプラセボよりも延長する)。本剤の使用にあたっては、オセルタミビルに比べ優れている点と上記のような特徴を理解したうえで、考慮すべきであろう。


元論文のタイトルは、”Baloxavir Marboxil for Uncomplicated Influenza in Adults and Adolescents”です(論文をみる)。

バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ®)については、このブログで何度も書いてきましたので、この薬についての私の意見が知りたい方は関連記事をご覧ください。

今回気になったのは、第Ⅲ相試験で「またバロキサビル低感受性に関与するとされるPAの遺伝子変異(I38T/M/F)を生じたのが9.7%であった。」という部分です。薬を1回投与しただけで、耐性変異が約1割に生じるということは、薬を使いまくったら、あっというまに耐性ウイルスが世の中に広まるということにならないでしょうか?

タミフル®のような外国産の薬でさえ、世界中の薬の約7割を消費する国ですので、国が推奨する国産の薬だと世界の9割以上を消費し、耐性ウイルス流行の先端を走りそうな予感です。

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