「かぜに効かない抗菌薬 6割超の医師が処方」

かぜに効かない抗菌薬 6割超の医師が処方
以下は、記事の抜粋です。


かぜの治療の際、60%を超える医師が、患者が希望すれば抗生物質などの抗菌薬を処方しているという調査結果がまとまりました。抗菌薬は使用量が多くなるほど、薬が効かない「耐性菌」を増やすことにつながり、専門家は「かぜには抗菌薬が効かないことを広く知ってもらう必要がある」と話しています。

この調査は感染症の専門学会が抗菌薬の処方の実態を調べようと行い、全国の269の診療所の医師が回答して、先月結果がまとまりました。

抗菌薬はウイルスが原因のかぜには効きませんが、患者側が効くと誤解し、処方を求めるケースがあります。調査では「患者や家族が抗菌薬の処方を希望した時」の対応について聞いていて、12.7%の医師が「希望どおり処方する」と答え、「説明しても納得しなければ処方する」と答えた医師も50.4%に上りました。「説明して処方しない」は32.9%にとどまりました。

抗菌薬は使えば使うほど、薬が効かない「耐性菌」が増え、何も対策が取られなければ、2050年には世界で年間1000万人が耐性菌によって死亡するという推計もあります。

調査をまとめた国際医療研究センターの大曲副院長は「かぜには抗菌薬が効かないと患者に広く知ってもらう必要がある。また抗菌薬が必要な感染症もあり、医師が適切に判断できるようかぜと見分ける検査法も普及させたい」と話しています。

必要のない抗菌薬を処方しないようにと、かぜに抗菌薬が効かないことを文書を使って説明を始めたクリニックもあります。愛知県蒲郡市のクリニックが患者への説明に使っている文書には、かぜの原因はウイルスで抗菌薬が効かないことや、耐性菌が世界的に大きな問題になっていると書かれています。

国も2020年までに抗菌薬の使用量を3分の2に減らす方針を打ち出していて、かぜで受診した子どもに対して抗菌薬は不要と説明して、処方しない場合、診療報酬を加算する試みをことし4月から始めています。

クリニックの中山久仁子医師は「子どもではかぜのような症状の90%がウイルス性の疾患と言われています。無駄な使用をなくして、耐性菌を減らしていきたい」と話しています。


ウイルスが原因の「かぜ」にバクテリアしか殺さない抗菌薬が効かないのは当たり前です。しかし、本当にどんな患者でも「かぜ」の症状を示す場合は、抗菌薬を処方しない方が良いのでしょうか?上の記事をよく見ると、私が太字にしたように、「子ども」の場合は、確かに90%がウイルスと書かれていますが、高齢者の場合については書かれていません。

MSDマニュアルプロフェッショナル版の「感冒(かぜの医学的な呼び名)」には以下のような記載があります(マニュアルをみる)。

「抗菌薬は,細菌の二次感染を示す明確な所見が存在しない限り投与すべきでない。慢性肺疾患患者では,抗菌薬の投与制限はより緩和されることがある。」

外来診療では、感冒の症状を示す患者に細菌感染が伴っているかどうかが分からないことも多く、高齢者は慢性肺疾患を持っている患者も多いです。

さらに、調査をした医師が「抗菌薬が必要な感染症もあり、医師が適切に判断できるようかぜと見分ける検査法も普及させたい」と言っているように、抗菌薬の必要性を判断できる検査法はまだ普及していません。「かぜ」症状を示す高齢者の何%がウイルス性の疾患であるかを示してもらわないと、高齢者の「かぜ」症状に対する抗菌薬の使用は止まらないと思います。

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