JAK1阻害薬upadacitinibが関節リウマチ再発例の症状改善

JAK1阻害薬upadacitinibが関節リウマチ再発例の症状改善/Lancet
以下は、記事の抜粋です。


疾患活動性が中等度~重度の関節リウマチ再発例の治療において、選択的JAK1阻害薬upadacitinibの経口投与により、症状が著明に改善することが、スタンフォード大学のMark C. Genovese氏らが行った臨床試験」で示された。upadacitinibは、JAK1に高い選択性を持つJAK阻害薬であり、第II相試験でメトトレキサートやTNF阻害薬の効果が不十分な患者の関節リウマチ徴候や症状を改善することが報告されている。

12週時でのACR20達成率(米国リウマチ学会(ACR)基準で20%の改善を達成した患者の割合)は、15mg群が65%(106/164例)、30mg群は56%(93/165例)であり、プラセボ群の28%(48/169例)に比し、いずれの用量群も有意に高かった。C反応性蛋白(CRP)で評価した28関節の疾患活動性スコア(DAS28(CRP))≦3.2点の達成率は、15mg群が43%(71/164例)、30mg群は42%(70/165例)と、プラセボ群の14%(24/169例)に比べ、いずれの用量群も有意に優れた。

12週時の有害事象の発生率は、15mg群が55%(91/164例)、プラセボ群は56%(95/169例)と類似したが、これに比べ30mg群は67%(111/165例)と頻度が高かった。


関節リウマチでは、関節のなかに白血球など免疫に関与する細胞が多数みられます。炎症をおこすサイトカインという物質がこれらの細胞を活性化すると、細胞は増殖したり、自らもサイトカインをつくるようになります。現在、広く使われている生物学的製剤はTNFなどの特定のサイトカインを細胞の外でブロックすることにより、細胞に炎症を起こす刺激が入らないようにします。これに対して、JAK阻害薬はサイトカイン受容体からの刺激を伝えるJAKという細胞内の酵素を阻害し、刺激が核に伝わるのを遮断して炎症を抑えます。

JAKファミリーキナーゼには、JAK1、JAK2、JAK3、TYK2の4種類のチロシンキナーゼがあり、造血系の細胞に多く発現しています。サイトカインや成長因子によって活性化されたこれらのJAKは、STATファミリーとよばれる転写因子をリン酸化し、リンパ球の分化、免疫制御、炎症などにおいて重要な役割を果たしています。病気では、潰瘍性大腸炎にも関係していると考えられており、JAK阻害薬は潰瘍性大腸炎治療薬としても注目されています。

現時点で、日本で関節リウマチに用いられるJAK阻害薬は、トファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ、ファイザー社)とバリシチニブ (商品名:オルミエント、アステラス製薬)です(説明をみる)。

トファシチニブは当初 JAK3 を選択的に阻害すると考えられていましたが,その後 JAK1,JAK2,JAK3 も阻害する汎 JAK 阻害剤だと考えられています。バリシチニブは、JAK3に対する阻害が弱く、主にJAK1とJAK2を阻害するとされています。その分、副作用はトファシチニブよりも少ないようです。

upadacitinib(ABT-494)は、 アメリカのアッヴィ社(英: AbbVie Inc.)というアボットから2013年にスピンオフした新しいバイオ医薬企業が開発中の薬です。上の記事で紹介された論文のように、JAK1を特異的に作用し、他のJAK2やJAK3に対する効果は少ないのですが、関節リウマチに対する効果は十分で、副作用も少ないようです。低分子なので、抗体医薬よりも安価で市場に提供できる可能性があります。とても期待しています。

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