胆汁酸トランスポーターを特異的にする新しい慢性便秘薬グーフィス®(エロビキシバット)

グーフィス(エロビキシバット)の作用機序【便秘症】
以下は、記事の抜粋です。


厚労省は2018年1月19日、「慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)」を効能・効果とするグーフィス錠®5mg(一般名:エロビキシバット水和物)を承認したと発表しました。

便秘の患者さんは全人口の1割程度で、治療に不満を抱く患者さんも多い疾患です。発症は年齢が高くなればなるほど割合が多くなり、男女比では女性に多くいとされていますが、高齢になれば男女差は無くなっていきます。特に80歳以上では男性に多いとされています。

発症経過から「急性便秘」と「慢性便秘」に大別されています。具体的には、排便回数の減少と排便困難の状態が6カ月以上持続する場合に、「慢性便秘」と診断されます。さらに原因や病態により「器質性便秘」と「機能性便秘」等に分類されています。

器質性便秘:腸の形態的変化(構造異常)を伴う便秘で、胃腸の疾患によるものが多い
機能性便秘:腸の形態的変化(構造異常)を伴わない便秘で、胃腸の機能低下(ストレスや運動不足、食生活)によるものが多い一般的には機能性便秘が多いとされていますね。

これら便秘症に対しては、生活習慣改善と同時に、センノシドなどの刺激性下剤や、酸化マグネシウムなどの下剤などを使った薬物治療が行われています。しかし、これらの薬剤では、長期連用による習慣性や高マグネシウム血症の発症リスクなど、問題も指摘されていました。

グーフィスが関与する胆汁酸は、肝臓でコレステロールから合成され、胆嚢・胆管を経て十二指腸に分泌されます。胆汁酸は、脂肪や脂肪性ビタミンの消化・吸収や老廃物・薬物等の排出に関与する他に、腸粘膜に作用して蠕動運動を亢進し、緩下剤様に作用します。

胆汁酸は、脂肪の消化・吸収を助けた後、そのほとんどが回腸で再吸収されて肝臓に送られ再利用されています。この胆汁酸の再吸収には回腸のトランスポーターが関与しており、トランスポーターを介して胆汁酸は体内に再吸収されます。

グーフィス®(一般名:エロビキシバット)は、この胆汁酸トランスポーターを特異的に阻害します。胆汁酸の再吸収が抑制されるため、腸管内の胆汁酸が増え、腸の蠕動運動が活発化するとされています。用法用量は、10mgを1日1回、食前に経口投与します。


グーフィス錠®は、EAファーマと持田製薬の2社で販売される予定です。EAファーマは、味の素製薬とエーザイを母体として、2016年にできた会社です。グーフィス錠は、国産ではなく、2012年に前身の味の素製薬がスウェーデンのアルビレオ社から日本に持ち込んだ薬です。

食物繊維が便秘を改善するメカニズムも胆汁酸の再吸収の抑制だとされています。また、食物繊維は、胆汁酸の成分であるコレステロールを排出するだけでなく、食品成分中のコレステロールそのものも吸着して体外に排出し、結果的に小腸から吸収されるコレステロールの量を抑える働きがあります。ということで、血中コレステロールに影響があるのか気になります。

関連記事で紹介した、グアニル酸シクラーゼC(GC-C)受容体作動薬のリンゼス錠®(一般名:リナクロチド)は「便秘型過敏性腸症候群」には適用がありますが、「慢性便秘症」には使用できないそうです。また、記事にも書かれていますが、センノシドなどの刺激性下剤には習慣性、酸化マグネシウムには高マグネシウム血症などの副作用があり、安心して使える慢性便秘に使える下剤がなかったので、期待しています。

関連記事
下痢を起こす大腸菌の毒素を発展させた便秘型過敏性腸症候群(IBS)治療薬リナクロチド

コメント

タイトルとURLをコピーしました