NHKで全国放送された「タン練くん」の誤嚥性肺炎に対するエビデンス?

5月18日のNHK「おはよう日本」で和歌山の歯科医師が開発した「タン練くん」という哺乳ビンを大きくしたような器具が、誤嚥性肺炎を予防すると紹介されました。新聞記事を探したところ以下のようなものがありましたので、抜粋して紹介します。
誤嚥防止トレーニングボトル 笠原さん開発


食べ物を飲み込む力が弱くなる高齢者に多い「誤嚥」を減らそうと、和歌山市の歯科医師、笠原直樹さん(66)が、「食べる力を鍛える」トレーニングボトル「タン練くん」を開発した。歯科医師として長年、高齢者の口腔ケアに携わってきた経験をもとに考案した商品。

口腔ケアに力を入れることで肺炎で亡くなる人を減らしたいと、笠原さんは特別養護老人ホームを開設。歯科診察室を設け自ら診療にもあたったが、思うように誤嚥は防止できない。「弱っていってしまう舌の筋肉を鍛えなければ」と発想を変え、思い付いたのが、高齢者向けのトレーニングボトルだった。

「タン練くん」は哺乳瓶のような形で、弾力性のあるシリコンゴム製の吸い口がついている。ボトルに飲み物を入れて飲むと、舌が自然と前後に動き、飲むために必要な筋肉が強化できる。同園で行った試験では、日に1回のトレーニングで舌圧が3カ月で約3~5倍も上昇する好結果が出た。商品を多くの人に使ってもらいたいと、会社も立ち上げた。誤嚥で苦しむ方を救うのが私のライフワーク」と力を込めた。

2018年9月1日から販売。3980円(税別)。30㍉㍑と200㍉㍑の2タイプある。問い合わせは笠原歯科医院内㈱リハートテック(℡073-477-2222)。


笠原氏が経営する「リハートテック」という会社のホームページには、宣伝用の動画やテレビ和歌山で放送されたとする動画(おそらくCM)もあり、冒頭には以下のような文句が書かれています。


ご高齢者が、誤嚥性肺炎による苦しみをあじわうことなくご自分の口で食物を咀嚼しながら栄養補給をして幸せな日々を過ごしていただける、そんな私たちの願いを込めて開発した商品が、当社の『タン練くん』です。


笠原氏は、テレビ和歌山の動画の中で「『タン練くん』は医療機器ではない」と言っていますが、このホームページの文句や笠原氏の発言は、どうみても『タン練くん』が誤嚥性肺炎の予防効果を持つことを宣伝しています。

エビデンスと思われるものを紹介しているページには以下のように書かれています。


私たちは、そんな誤嚥の苦しみを解決するべく、食後のお茶や日常飲まれる飲料を嚥下力トレーニングボトルに入れて飲んでいただき、舌圧計による舌筋臨床検査を繰り返してきました。
その結果、約3ヶ月(毎日1回)のトレーニングで舌圧力が上がる事がわかりました。

※効果には個人差があります。

高齢者さんが必要な舌圧値は、20Kpaを下回ると誤嚥リスクが高くなると言われております。


データとしては、98歳と89歳の2例が示され、舌圧力が3~5倍になったことが示されていますが、上記のように「※効果には個人差があります。」と書かれており、統計的なデータは示されていません。また、『タン練くん』が舌圧力を強める効果があることを示した論文も紹介されていません。

「高齢者さんが必要な舌圧値は、20Kpaを下回ると誤嚥リスクが高くなると言われております。」と書かれているだけで、そのエビデンスを示す文献などの紹介もなく、『タン練くん』に誤嚥性肺炎を予防する効果があるデータは、まったく示されていません。ホームページのニュース&ブログのページには以下のような記載もありました。


2019.05.18 本日、NHK「おはよう日本」全国放送のため、電話が混み合い話し中が続く可能性があります、ホームページから、購入いただくか、info@rehearttek.comに御連絡下さい。


『タン練くん』に舌圧力増強効果があったとしても、収納できる液体にとろみがなければ、かえって誤嚥性肺炎を増やす可能性もあります。NHKは全国放送でCMを流す前に、この「医療機器もどき」の本当のベネフィットとリスクについて、良く調べて欲しかったと思います。

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