日本は幹細胞製品の販売にブレーキを__効果が証明されていない治療は上市されるべきでない

Japan should put the brakes on stem-cell sales___Unproven therapies should not be marketed to patients.
以下は、記事の日本語訳です。かなり意訳です。


脊髄損傷の治癒は、医学における、そして幹細胞および再生医療の分野における象徴的な目標として、不断の努力が続けられてきた最も困難な探求の1つです。

しかし、その進歩は苛立たしいほど遅いもので、動物実験に基づいた一見有望な治療のほとんどは、発展せずに伸び悩んでいます。

先週、カリフォルニアのAsterias Biotherapeutics(アステリアス)という会社は、胚性幹細胞を乏突起神経膠細胞(神経細胞を助けてその成長を刺激することができる中枢神経系の細胞)に変換し、その細胞を脊髄損傷患者の背中に注入するという、12ヶ月にわたる第I相臨床試験から得られた有望な結果を発表しました。発表されたデータによると、注入された細胞が損傷部位に生着しており、ほとんどの患者(22人中21人)が運動の改善を示しました。

しかし、これらはまだ初期段階の結果です。運動の改善が注入された細胞の結果であるかどうか、あるいは自分の体の再生能力のような何か他の結果かどうかはまだ明らかではありません。それを明らかにするために、同社はランダム化対照第II相臨床試験を進める許可を望んでいます。それは、物事を進めるための正しい方法です。このように、臨床試験は、慎重に、ゆっくりと、そして厳密に行われるべきです。

一方、日本では、非常に懸念されるアプローチが広がっています。先月、札幌医科大学の研究者たちは、アステリアス社が研究している細胞も含めて、幹細胞を使用する他のすべての脊髄損傷治療を網羅する形で、間葉系幹細胞と呼ばれる種類の細胞のヒトへの注射治療に関して、一足飛びに市場承認を受けました。このような商業的治療を患者に行うことに対して、その効果を疑うべきであり、少なくとも遅らせるべきである理由があります。

これらの細胞の性質、特にそれらが幹細胞として機能し、日本のグループによって示唆されたように神経細胞に分化するかどうかは、激しい議論の対象となっています(D. Sipp et al。Nature 561、455–457; 2018)。有効性を実証したとする臨床試験はたった13人の参加者に基づいており、対照群はなく、結果も未発表のままです。

2014年に開始された再生医療の迅速な承認システムにより、患者への治療を迅速化し、技術革新を促進することで、日本政府は、Stemiracと呼ばれるこの間葉系幹細胞治療を「条件付き承認」として市場への投入を許可しました。この治療で会社は患者から料金を徴収することができ、そして会社はその有効性を示すために7年の猶予を与えられました(まだ有効性は示されていない)。治療が市場に出た後で、その証拠がどのように収集されるかは、まだ答えられていません。

より良い方法としては、誰が治療のための細胞を受けたのか、誰がプラセボを受けたのかを知らない参加者と医師の両方を用いて、ランダム化対照臨床試験を実施することでしょう。しかし、日本の迅速承認システムの下では、札幌医大の研究者たちはこれを行う必要はありませんでした。研究者たちは、彼らがすでに収集しているはずの臨床データも公表すべきでしたが、日本では不思議なことにそうすることは推奨されていません。

これは驚くべきことです。企業によっては、自社の営業秘密を保護するために臨床結果を公表したくない場合があります。しかしこの場合、研究者にデータを公表しないように言っているのは日本の厚生労働省です。それは包括的な禁止ではありませんが – そのようなデータを公表することの妥当性はケースバイケースで評価されるそうです – 厚労省の代表はこの場合は発表は推奨されないとNature誌に対して言いました。この厚労省代表によると、公表されたデータが「宣伝用資料」として使用され、患者や厚労省職員に不当な影響を与える可能性があるからだそうです。

このようにして、日本は奇妙な状況を作り出してしまいました。札幌医大はデータを示さない広告の中で治療効果について約束していますが、世界の専門家が評価できる形で科学的証拠を含めて公表することは誤解を生む可能性があるのでしない、としています。ここで使われているわけのわからないカフカ的な論理では、データなしで薬を宣伝する方が、データありで宣伝するよりも優れていると言っているようなものです。

日本チームは、対照試験が不要であることを確信させるように、非常に強く良い治療結果を約束しています。そうなることを願いましょう。しかし、対照試験がない臨床試験の結果があいまいなために、幹細胞治療が無期限に続いてしまう可能性が高くなります。それは、試験的な治療を希望する患者にとっても、真に厳格な対象試験を置いて治験をを行っている他の会社にとっても公平ではありません。

日本はより良く透明性のあるシステムを導入することができるし、すべきです。つまり、対照試験による健全な臨床効果データを作成すべきです。できれば、それを科学出版物で公表し、国際的な医学研究者コミュニティによって評価されるべきです。言い換えれば、日本はカリフォルニアで行われたアステリアス社のやり方から多くを学ぶべきです。それができるまで、「迅速承認した」幹細胞治療を人々に提供することは時期尚早で不公平です。


上の記事について、再生医療学会で阪大の澤氏が「違和感」があると言ったそうです。以下がその記事です。私は、あまり「違和感」は感じません。


英科学誌ネイチャーに「違和感」
英科学誌ネイチャーが日本の再生医療の条件付き早期承認制度を批判する記事を掲載したことを受け、日本再生医療学会の澤芳樹理事長は3月22日、神戸市で開かれた学会総会の講演で「違和感がある」と反論した。

人工多能性幹細胞(iPS細胞)などの活用を推進するため、国は2014年施行の医薬品医療機器法で、再生医療製品には、安全性を確認して条件付きで承認した上で、改めて安全性や有効性を検証する制度を世界に先駆けて新設。早期の本格実用につなげる狙いがある。

ネイチャーは今年1月、「日本の幹細胞製品の販売にブレーキを」と題し日本の早期承認制度を批判する記事を掲載した。

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