「揺さぶられっ子症候群(SBS)を3徴候で診断」に科学的根拠なし

「揺さぶられっ子症候群に科学的根拠なし」日弁連シンポで外国人医師らが警鐘
以下は、記事の抜粋です。


2月16日、東京の弁護士会館で、『揺さぶられっこ症候群(SBS)を知っていますか』と題した国際シンポジウムが、5時間にわたって開催されました。

「乳幼児揺さぶられ症候群」は、その名の通り、乳幼児を強く揺さぶったことによって起こるとされている傷病名です。

赤ちゃんの頭部にこの症状が確認された場合は、一緒にいた大人による虐待を疑われ、これまで多くの保護者が傷害や傷害致死の罪で逮捕、起訴され、有罪判決を受けてきました。しかし一方で、被告人とされた保護者たちが一貫して虐待を否認するケースも少なくありません。

その供述の大半は、「子どもはつかまり立ちから転んだだけ……」「ベビーベッドから落ちてしまったんです」「お昼寝をしていたら急に意識がなくなってしまいました」 というもので、もし、それが事実なら、彼らは冤罪の被害者ということになるのです。今も勾留されている方、有罪判決を受けて高裁で係争中の方々など、無実を訴えながらも過酷な体験をされている方は数多くおられるのです。

転倒事故やけいれん、低酸素などでも3徴候は起こる
「乳幼児揺さぶられ症候群」は、英語で「Shaken Baby Syndrome」と言い、その頭文字をとって「SBS」と呼ばれています。「虐待性頭部外傷(Abusive Head Trauma)」を略して、「AHT」と表記されることもあります。

医学的には赤ちゃんの身体に目立った外傷がないのに、頭にだけ、
1) 硬膜下血腫/頭蓋骨の内側にある硬膜内で出血し、血の固まりが脳を圧迫している状態
2) 眼底出血(網膜出血)/網膜の血管が破れて出血している状態
3) 脳浮腫/頭部外傷や腫瘍によって、脳の組織内に水分が異常にたまった状
という3つの症状(医学の世界では3徴候と呼ばれています)があれば「SBS」、つまり「虐待の可能性が高い」と、ほぼ機械的に診断されています

しかし、今回の国際シンポジウムでは、外国でSBS問題に対峙してきた専門家らが、自身の経験と研究に基づく具体的な理由を述べながら、「3徴候が見られる乳児が『揺さぶられた』という推定に、科学的根拠はない」とはっきり言い切ったのです。

厚生労働省のウェブサイトには、「乳幼児揺さぶられ症候群」を解説するため、動画もアップされていますが、「厚労省の動画は、実際の脳出血のイメージとは異なっている」という具体的な反論が出されています。その他にも以下のような報告があります。

●通常分娩で生まれた健康な新生児でも、その30%に網膜出血が見られ、吸引分娩の場合は75%である。
●通常分娩で生まれた健康な新生児でも46%に硬膜下血腫が見られた。
●低い場所から落ちて頭を打ったケースや、病気による痙攣、誤嚥などによる低酸素症などでも似た症状が現れる。
●脳の出血や損傷は、放射線画像だけで見分けるのが難しい。

これらの根拠により、シンポジウムでは「3つの症状は、揺さぶりではなく、さまざまな原因で起こりうる」「SBS仮説は科学的検証に堪えない」などと、現状の判断を厳しく批判したのです。さらに、3700以上のSBSに関する論文を検証。3徴候に科学的なエビデンスがないと結論付けた報告もありました。

日本では2年ほど前から、「乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)」の診断に対する疑問の声が大きくなり始め、2017年の秋には、弁護士や法学者を中心に「SBS検証プロジェクト」が立ち上がりました(「SBS検証プロジェクト」のサイトをみる)。

その後、無罪を訴える親たちの側に立って刑事裁判に協力する脳神経外科医が現れ始めたことで、逮捕されながらも不起訴となったり、無罪となるケースが相次いでいます。

ちなみに、2018年にはSBS事件が大阪で3件、静岡で1件が不起訴に。また、起訴されて刑事裁判にかけられたケースでも、2018年の3月から2019年の1月までの間に、大阪地裁だけで無罪判決が3件下されています。有罪率99.8%という刑事裁判の実態からみれば、この数字がいかに特別なものであるかがわかります。

SBS検証プロジェクトの共同代表である秋田真志弁護士は、国際シンポジウム後半のパネルディスカッションに登壇し、こう訴えました。

「虐待を見逃すことはゆるされません。しかし、えん罪も絶対に防がなければなりません。虐待をしていない親から子供を分離するのは、国家による虐待です。今、日本は、SBS理論に関して思考停止しているといえるでしょう。それを超え、立ち止まって考えなおす時期に来ているのではないでしょうか。建設的な議論をしていきたいと思います」

厚生労働省はいち早く、「乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)」この問題を再検証するべきではないでしょうか。


私は、この問題に熱心に取り組まれている弁護士や法学者の方と知り合ったのをきっかけに、「SBS検証プロジェクト」のメンバーにしていただきましたが、ほとんど何の力にもなれず、歯がゆく思っていました。恥ずかしいことに、この記事をみて初めて、最近は不起訴や無罪になるケースが増えてきたことを知りました。

医学教育には「3徴候」あるいは「3主徴」が多く出てきます。死(瞳孔反応停止、呼吸停止、心停止)、バセドウ病(甲状腺腫、眼球突出、頻脈)、胆道感染症(発熱、右季肋部痛、黄疸)、特発性正常圧水頭症(歩行障害、認知症、尿失禁)、アレルギー性鼻炎(くしゃみ、水性鼻漏(水っぱな)、鼻閉)や最近では、女性運動選手の健康リスク(骨粗鬆症、無月経、摂食障害)などもあります。

一般的には、これら3つの症状から素早く病気を類推することは、患者さんの救命に直結する重要な行動です。しかし、硬膜下血腫と眼底出血と脳浮腫が認められたことからSBSであると機械的に診断することは、子供の両親が「憂さぶり」による虐待を疑われ、一方的に親子分離される可能性に直結しています。診断にあたる医師は、機械的な診断を極力避け、丁寧にすべての可能性を考える必要があります。

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