「急性骨髄性白血病」は単一の疾患ではなく、原因も予後も異なる10種類以上の異なる疾患の集合、「症候群」

池江選手告白の「白血病」治療法が劇的進化!もはや“不治の病”ではない
池江選手の「白血病」についての多くの記事がありますが、「白血病」について誤解を招くようなものも多いです。以下の記事は、比較的正しく書かれていますが、それでもまだ、白血病には「急性骨髄性白血病」、「急性リンパ性白血病」、「慢性骨髄性白血病」、「慢性リンパ性白血病」の4種類で、それぞれの白血病は同じような原因で、治療も同じで、同じ経過をたどるような誤解を与えます。以下は、記事の抜粋です。


3-LINE SUMMARY
白血病は不治の病ではない
「急性」と「慢性」では症状も治療法も全く異なる
遺伝子や染色体が傷つく原因は諸説あるがわかっていない

白血病は今や不治の病などではありません。化学療法や支持療法、骨髄移植などの進歩は劇的で目覚ましく、多くの患者さんが病いを克服し、社会復帰をされています。

白血病は血液のがんです。血液細胞には赤血球、血小板、白血球があります。すべての細胞の源である造血幹細胞から、それぞれの細胞になるまでには何段階もの細胞分化を経ますが、そのいずれかの段階で白血球またはリンパ球になる細胞が異常に増えてしまう病気です。

「急性」と「慢性」は全く別の疾患
白血病は、がん化した細胞のタイプから「骨髄性」と「リンパ性」に分けられ、さらに病気の進行パターンや症状から「急性」と「慢性」に分けられます。※急性骨髄性白血病56%、急性リンパ性白血病19%、慢性骨髄性白血病22%、慢性リンパ性白血病3%

他の疾患のように、急性白血病の経過が長引いても、慢性白血病になる訳ではありません。白血病の急性および慢性は、それぞれ異なった疾患なのです。急性白血病は、急激に発症し、顕著な貧血や白血球増加、血小板減少を示すことから迅速な治療が必要となります。一方、慢性白血病の白血球数は著明に増加するのですが、症状のないことも多く、健康診断で偶然に見つかることも多いようです。

治療法ですが、急性白血病では、まず複数の抗がん剤を組み合わせた寛解導入療法を行って、数週間で骨髄の白血病細胞を完全に死滅させます。その後、正常な骨髄の細胞のみが増えて回復してきた頃に、わずかに生き残った腫瘍細胞を消滅させるための寛解後療法(地固め療法、および維持強化療法)を行います。慢性骨髄性白血病の薬物療法には、分子標的治療薬、化学療法、インターフェロン‐α療法があり、白血病細胞を減少させ、症状を抑える効果があります。

治療の効き具合によって、あるいは再燃時には、さらに踏み込んだ治療が必要な場合があります。ヒト白血球型抗原(HLA)が一致する、適切なドナーがいる患者では、造血幹細胞移植を行うケースもあります。その後再発がみられないことを定期的な外来診療で確認していきます。とはいえ、急性・慢性ともに、良い薬が新たに登場しています。実用化に向けて、治験が進んでいる新しい薬剤もあります。


記事に書かれていますが、がんの多くは後天的に遺伝子に傷がついておこります。白血病についての遺伝子の傷については、慢性骨髄性の大半のようによくわかっているものもありますが、急性骨髄性では完全にわかっているわけではありません。

急性骨髄性白血病(AML)の診断は,①骨髄における白血病細胞の存在(WHO分類では20%以上、FAB分類では30%以上)、②白血病細胞が骨髄系起源であること、③白血病細胞の染色体核型・遺伝子変異解析によって行われます。その後WHO分類に従って20種類以上に病型分類されます。関連する遺伝子も10種類以上あります。(日本血液学会のサイトをみる)。

これらの遺伝子異常、年齢、合併症、全身状態などによって予後(病気にかかった者について、その病気がたどる経過と結末に関する、医学上の見通し)は異なります。以下は、日本血液学会によるAMLの予後についてのまとめです(日本血液学会のサイトをみる)。

層別化因子 良好となる因子 不良となる因子
年齢 50歳以下 60歳以上
全身状態(PS) PS 2以下 PS 3以上
発症様式 de novo 二次性
染色体核型 t(8;21)(q22;q22.1)
inv(16)(p13.1q22)
t(16;16)(P13.1;q22)
t(15;17)(q24.1;q21.2)
3q異常[inv(3)(q21.3q26.2)
t(3;3)(q21.3;q26.2)など]
5番・7番染色体の欠失または長碗欠失
t(6;9)(p23;q34.1)複雑核型
遺伝子変異 NPM1 変異
両アレルCEBPA 変異
FLT3-ITD変異
寛解までに要した治療回数 1回 2回以上

池江選手の場合、新聞で知ることができる情報ではAMLの確率が高いと思いますが、AMLだとしても、渡辺謙氏や本田美奈子氏と「同じ病気」とは言えません。リンパ球以外の白血球、赤血球、血小板になる予定である細胞ががん化した場合、すべてAMLに分類されます。AMLは上に書いたように、単一の疾患ではなく、原因も予後も異なる10種類以上の異なる疾患の集合、「症候群」です。これは、以前の記事で、「乳がんは原因も治療も異なる10種類の異なる病気に分類される」と書いたこととよく似て似ています(記事をみる)。

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