統合失調症や認知症患者の刑事責任能力について

三田佳子・次男が覚せい剤で逮捕、三田の説明「統合失調症を抱え」に強い疑問を感じる
次男が覚醒剤で逮捕された三田佳子さんの「統合失調症を抱え、精神科に通うなど、本人なりに努力はしてきましたが、このような結果になり、大変残念としか言いようがありません。」という謝罪コメントに対して(謝罪文をみる)、片田珠美という精神科医が疑問を書いた記事がありました。以下は、その抜粋です。


次男が覚せい剤取締法違反の疑いで逮捕された件について、女優の三田佳子さんが報道各社にコメントを発表したが、私は違和感を覚えた。私が引っかかったのは、「統合失調症を抱え」という箇所で、本当に統合失調症なのだろうかという疑問を抱かずにはいられなかった。

このような疑問を抱いたのは、次の2つの理由による。
(1)統合失調症の患者が覚せい剤を使用することはまれ。
(2)覚せい剤の使用によって発症する覚せい剤精神病では、幻覚や妄想など、統合失調症に類似した症状が認められる。

(2)については解説が必要だろう。覚せい剤を常用すると、脳内のドーパミンという神経伝達物質が過剰になり、それによって幻覚や妄想が出現するのが覚せい剤精神病である。一方、統合失調症も、ドーパミンの過剰によって発症すると考えられている(ドーパミン仮説)。

ドーパミンの過剰が覚せい剤によって引き起こされるのか、それとも統合失調症によって引き起こされるのかという違いがあるだけで、臨床症状がよく似ているので、ときには鑑別診断が難しい。

当然、精神科医は腕の注射痕を確認する。だが、最近は加熱吸引や、経口摂取が増えているので、注射痕があるとは限らない。だから、覚せい剤の使用によって幻覚や妄想が出現したのに、統合失調症と誤診されることがないわけではない。

もちろん、臨床症状には違いがある。まず、覚せい剤精神病では幻視が多いのに対して、統合失調症では幻聴が多い。また、妄想内容も、覚せい剤精神病では本人が置かれている状況に反応したものが多いのに対して、統合失調症では現実離れした荒唐無稽なものが多い。

三田さんの次男が最初に逮捕されたのは18歳のときで、覚せい剤所持の現行犯逮捕である。それ以前から幻覚や妄想などの症状があったのなら、統合失調症の可能性が高いが、それ以降にこれらの症状が出現したのなら、むしろ覚せい剤精神病の可能性が高いと思う。

覚せい剤の使用を開始した後に統合失調症を発症するケースの頻度は低い。したがって、主治医は三田さんの次男を本当に統合失調症と診断したのだろうかと疑わざるを得ない。


読者にわかり易いように書かれているのだと思いますが、上の記事で「統合失調症も、ドーパミンの過剰によって発症すると考えられている(ドーパミン仮説)」というのは、現在はほぼ否定された仮説です。少なくとも、統合失調症の患者の脳内ドーパミン量が多いという定量結果は、この仮説が示されて30年以上経った現在でもまだ示されたことがありません。むしろ、否定する結果がほとんどです。また、1つ目の理由として挙げている「統合失調症の患者が覚せい剤を使用することはまれ。」というのも、科学的根拠に基づいているとは思えません(私の誤りであれば、どなたかデータを示して反論してください)。

(2)の理由「覚せい剤の使用によって発症する覚せい剤精神病では、幻覚や妄想など、統合失調症に類似した症状が認められる。」には同意します。理由はこれだけだと思います。

問題は、いくら著者が上の2つの理由を示して、三田さんの次男が統合失調症ではないと言っても、それを医学的に証明する方法はありません。というのは、統合失調症はあくまで精神症状から診断される病気だからです。これは、がんの診断などとは明らかに違います。

以前は、刑事裁判では重大な犯罪をおかした精神障害者には刑罰よりも精神科医療を与えるという流れがありましたが、現在では、逆の流れ、つまり刑罰を与える流れに変わってきています。こういう記事は、裁判官の判断に影響を与え、刑罰化の流れは強められると思います。

統合失調症も約100人に1人が発症する多い病気ですが、認知症ははるかに多い病気です。今後は、認知症患者が刑事責任能力を問われることも増えてくると思われます。家族にも責任があるのか?事件当時と裁判時で認知症の症状が違う場合はどうするのか?刑罰に意味があるのか?などなど難しい問題が多いです。関連記事に紹介した裁判でも、筧千佐子被告の認知症が問題になっています。

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