軽症脳梗塞急性期の治療効果はtPAとアスピリンで差がなかった

軽症脳梗塞急性期の治療効果はtPAとアスピリンで差がなかった
この記事は、JAMA誌2018年7月10日号に掲載された報告の解説記事です。元論文のタイトルは、”Effect of Alteplase vs Aspirin on Functional Outcome for Patients With Acute Ischemic Stroke and Minor Nondisabling Neurologic Deficits: The PRISMS Randomized Clinical Trial”です(論文をみる)。

脳梗塞は脳の動脈がつまって起こる病気です。動脈がつまると神経細胞が壊死し、時間が経てば壊死巣が広がり障害が大きくなります。そこで、脳の細胞が死んでしまう前に血管を詰めている血栓(血の固まり)を溶かし、血流を再開することで脳の働きを取り戻そうというのが、血栓溶解療法です。tPA(tissue-plasminogen activator)は、血栓を強力に溶かす酵素で、血栓溶解療法の主役です。しかし、壊死巣に出血を起こす危険性も高いとされています。

以下は、上の論文についての国際医療福祉大の内山氏の解説の抜粋です。


対象症例は米国での標準用量(0.9mg/kg)のアルテプラーゼ投与群かアスピリン325mg投与群に振り分けられ、90日後の転帰が改変ランキン尺度スコアで評価された。安全性は治療開始後36時間以内の症候性頭蓋内出血で評価された。試験は資金難のため途中で中止されてしまったことから症例数は目標に達していない313例のみであったが、転帰良好例はアルテプラーゼ群78.2%、アスピリン群81.5%であり、症候性頭蓋内出血はアルテプラーゼ群3.2%、アスピリン群0%であり、アスピリンを上回るアルテプラーゼの有用性は示されなかった。

ただし、試験が早期に中止されてしまったため最終結論を下すことはできず、さらなる研究が必要であるが、軽症例の血栓溶解療法の適用に一石を投じる試験結果であったとはいえる。

逆に、脳梗塞発症直後からのアスピリン投与の転帰改善効果をもっと見直す必要があることを示唆しているのかもしれない。


軽症の急性虚血性脳卒中患者の場合に限る結果かもしれませんが、「アスピリンを上回るtPA(アルテプラーゼ)の有用性は示されなかった。」というのは、tPAの価格と安全性を考えると非常に衝撃的な結果です。

アスピリンは脳梗塞の予防だけではなく、軽症の場合は、脳梗塞が発症した後でもtPAに負けないぐらい有効である可能性があるということです。アスピリンには、大腸がんの予防効果なども報告されており、本当に良い薬だと思います。

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