「子宮頸がんワクチンマウス実験論文」の問題点

m3という医師の情報交換サイトに「頭頸医」という方が以下のような投稿をされています。投稿の内容には私も同意します。以下に紹介します。


原著を読んだので問題点を指摘してみます。実験モデルそのものも問題ですが,

Figure 1. 自己免疫性脳脊髄炎モデルマウスにおける筋トーヌスの低下を示した図。
各グループ(コントロール・百日咳毒素のみ・HPVワクチンのみ・百日咳毒素+HPVワクチン)のマウスの数が6, 7, 14, 21と全く異なります。通常は各群10匹ずつなどにすると思うのですが。各群の差に関する統計学的な解析はなされていません。

Figure 2. 百日咳毒素+HPVワクチンで脳室の縮小を示した図。
定量的な解析がされていない。先ほどの実験で各群6-21匹のマウスが使用されていたにも関わらず,Figure 2以降では数匹のデータが示されているだけで,チャンピオンデータを提示しただけだという疑いがある。さらに「HPVワクチン関連神経免疫異常症候群(HANS)」と言われる患者で髄液圧の低下は一般的に認められる所見ではなく,いわゆるHANSの病態を再現したモデルではない。

Figure 3. 百日咳毒素+HPVワクチンで脳細胞のアポトーシスが誘導されることを示した図。
図が小さすぎてTUNEL陽性細胞を確認することができない。これは出版後外部から指摘があったにも関わらず,論文は撤回まで修正されることがなかった。また、本文中で統計学的な処理方法や、定量的データを示さずに百日咳毒素+HPVワクチンにおいてコントロールよりも7倍TUNEL陽性細胞が確認されたと述べている。

Figure 4, 5. 百日咳毒素+HPVワクチンの免疫組織化学。
バックグラウンドが強すぎて比較が難しい画像が多い。定量的な処理もなされていない。さらにコントロール群 vs. 百日咳毒素+HPVワクチン群のみ提示されていて、変化が百日咳毒素によるものなのか、HPVワクチンによるものなのかが分からない。

図を見るだけでいろいろと問題点が指摘できます。これは著者にも問題があると思いますが、Scientific Reportsの査読体制に大きな問題があると言わざるを得ません。

また、マウスに百日咳毒素+HPVワクチンを投与して自己免疫性脳炎が発症したとしてもただちにヒトについて同じことが言えるとは限りません。

その理由は以下のようなものがあります;
1. 百日咳毒素によって自己免疫性脳脊髄炎が起こりやすくなっているため、実際はその影響を差し引く必要がある。
2. 筋トーヌスの低下は必ずしもHANSに特徴的な所見ではない。
3. マウスが認識できる抗原とヒトが認識できる抗原は異なる可能性がある。
4. 自己免疫性脳脊髄炎のターゲットになったマウスの脳抗原がヒトで保存されているとは限らない。

このような瑕疵の多い論文が撤回されたのは非常に歓迎すべきですが,やはり一度は査読をすり抜けてしまったことが悔やまれます。


上の投稿で「実験モデルそのものも問題」と書かれているのは、マウスにHPVワクチンだけではなく、百日咳毒素を用いて、HPVワクチンに血液脳関門を通過させているところが問題だと考えておられるのだと思います。HPVワクチンの投与量が多いことも問題かもしれません。

あと、査読をすり抜けたことですが、論文が掲載されたScientific Reports は、「雑誌」というよりも「論文掲載サイト」とよぶべきジャーナルです。掲載した論文に対して読者が自由にdiscussionできるopen accessというシステムをとっています。また、ページに限りのある紙の雑誌ではなく、ほぼ無限に掲載できるインターネットのサイトなので、年間5000以上の論文が次々に掲載されています。今回のように問題が指摘され、それをeditorが認めて撤回するのは、まったく想定内で普通の対応だと思います。

以下の記事をみて、韓国でも日本の報道の影響を受けて、ワクチンの接種率が低いことを知り驚きました。無料なのにもかかわらず、同ワクチンの接種率が60%に届かないそうです。

韓国社会に子宮頸がんワクチンの恐怖広めた日本の論文撤回

それにしても、毎年1万人が子宮癌の手術を受け、3000人が死亡している日本の状況はまだまだ変わらないのでしょうか⁇

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