「飲む日焼け止め」を外用の日焼け止めや衣服による防御の代用にしてはいけない

「飲む日焼け止め」の安全性にアプローチする
最近、「飲む日焼け止め」というものがあることを知り、調べてみたところ、非常に良い記事をみつけたので紹介します。薬剤師の工藤知也氏が書かれたものです。


「飲む日焼け止め」と検索すると、50万件以上ヒットします。インスタグラムを中心とした広告展開で、「飲む」という手軽さが受け、想像以上に流行しているようです。

無論、パッケージに紫外線に対する効果の表示がありませんが、使用者の声を掲載して、「日焼け止め」として販売しているのは明らかです。ちなみに、パッケージに標榜していなくても、関連する情報とともに販売すると規制の対象になります。

現在、日本で見かける「飲む日焼け止め」の主要成分は、Fernblock®(フェーンブロック)とNutroxsunTM(ニュートロックスサン)の2種類です。

Fernblock®は、ダイオウウラボシというホンジュラス原産のシダから抽出した成分です。論文では、別名からPolypodium leucotomos (PL) extract(抽出物)として登場します。南米では古くから、シダ類が民間薬として使われており、そこから商業化が進んだようです。

NutroxsunTMは、グレープフルーツとローズマリーから抽出した成分でポリフェノールを含みます。グレープフルーツは身近な果物ですし、ローズマリーもハーブとしてお馴染みです。

ここでまず、「植物の抽出物」という点が気になります。漢方を見れば明らかなように、植物だから健康的というのは幻想です。

Fernblock®の紫外線に対する防御効果、そして経口摂取の安全性の報告について27報の論文があります。

今から20年以上前の1996年、ハーバード大学のSalvador Gonzalezが Fernblock®の紫外線に対する防御効果について初めて報告しました1)。

2014年には、白人9名においてFernblock®の紫外線に対する防御効果を検討しています。方法としては、Fernblock®摂取群(体重1kgあたり7.5mg摂取)と対照群に分けて紫外線照射による紅斑発生24時間後に解析しています。結果から、対照群と比較してFernblock®摂取群では紅斑の程度も軽く、日焼け反応に特徴的な壊死細胞数の優位な減少を見出しました2)。

また同年には、白人10名に対する紫外線治療の副作用軽減を目的とした、Fernblock®経口摂取の有効性を発表しています。その中で、Fernblock®摂取群では、色素沈着が4カ月後まで減少し、日焼け反応に特徴的な壊死細胞数の有意な減少を報告しました3)。

これらからFernblock®経口摂取の紫外線に対する一定の防御効果を否定できません。しかし、被験者が少ないので、副作用の考察が欠落しています。 科学的知見としては構いませんが、これを食品として販売することには疑問が残ります。

NutroxsunTMは、グレープフルーツとローズマリーから抽出した成分ですので、Fernblock®と比べて安全性については優位と考えます。

2016年、スペインのNobileらは、白人女性90名でNutroxsunTMの紫外線に対する防御効果を発表しました。方法としては、NutroxsunTM服用群(100mg or 250mg)と対照群で紫外線照射による紅斑反応とシワの深さを評価しています。

結果は摂取後2週間で、NutroxsunTM服用群では対照群に比べて紅斑反応やシワの深さを抑制していました。この効果は摂取継続2カ月後でも同様の結果を示し、100mgと250mgでは同程度の効果でした4)。被験者が90名で有意差のあるデータですので、この論文自体は一見に値すると思います。しかし残念ながら、NutroxsunTM経口摂取による紫外線に対する防御効果を示した論文は、この1報のみなのです。

最もはっきりしているのは安全性の科学的な配慮に欠けている点です。効果については否定しませんが、被験者数が少なく決定的ではありません。もちろん、薬との相互作用は全くわかりません。従って、薬を飲んでいる方には控えて頂くのが妥当でしょう。服用する場合は、身体の変化や治療の効果に十分気を付ける必要がありそうです。

引用文献
1) Gonzalez S, et al. Inhibition of ultraviolet-induced formation of reactive oxygen species, lipid peroxidation, erythema and skin photosensitization by polypodium leucotomos. Photodermatol Photoimmunol Photomed. 1996; 12(2): 45-56. PMID: 8895789

2) Middelkamp-Hup MA, et al. Oral Polypodium leucotomos extract decreases ultraviolet-induced damage of human skin. J Am Acad Dermatol. 2004; 51(6): 910-918. PMID: 15583582

3) Middelkamp-Hup MA, et al. Orally administered Polypodium leucotomos extract decreases psoralen-UVA-induced phototoxicity, pigmentation, and damage of human skin. J Am Acad Dermatol. 2004; 50(1): 41-49. PMID: 14699363

4) Nobile V, et al. Skin photoprotective and antiageing effects of a combination of rosemary (Rosmarinus officinalis) and grapefruit (Citrus paradisi) polyphenols.
Food Nutr Res. 2016; 60: 31871. PMID: 27374032


米国皮膚科学会は、内服薬のみで十分な紫外線対策ができるという科学的エビデンスはまだ得られていないとして、サプリメントを外用の日焼け止めや衣服による防御の代用にしてはならないという声明を出しています。(声明をみる)。

一方で米国皮膚科学会は、外用薬(塗り薬)の効果は認めています。即ち、広域スペクトルの外用日焼け止め(SPF15以上)は日焼けを防ぎ、皮膚癌リスクや日光による皮膚老化を抑えることが科学的に証明されているとしています。同学会は、紫外線対策として、日陰の利用、日光を防ぐ衣服の着用、SPF30以上の広域スペクトルの耐水性日焼け止めの塗布などを勧めています。「飲む日焼け止め」は、これらの科学的に証明された対策を怠り、かえって紫外線による障害を悪化させる可能性があります。飲むのは自由ですが、気を付けてください。

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