「創薬大国」日本の実現性は?

創薬大国へ強化プラン本年度から始動 遺伝子情報を基に治療法選ぶ「ゲノム医療」推進へ
以下は、記事の抜粋です。


厚生労働省がまとめた「日本創薬力強化プラン」の全容が12月30日、分かった。「創薬大国」を実現するため、革新的な新薬を創出する環境整備を進め、国際的競争力を強化するのが狙い。約2人に1人が罹患するがんでは、遺伝子情報を基に治療法を選ぶ「ゲノム医療」を推進するため、厚労省はゲノム治療を行う医療機関を「がんゲノム医療中核拠点」に指定するほか、中核拠点が解析したゲノム情報を集約・管理する「がんゲノム情報管理センター」を整備し、治療薬開発にも役立てる。

強化プランは主に、研究開発環境の改善▽コスト低減と効率性向上▽日本発医薬品の国際展開の推進▽ベンチャーの創出-で構成される。厚労省と内閣府は、平成29年度補正予算案と30年度当初予算案で総額約830億円を確保し、29年度から順次作業に着手する。

ゲノム医療の推進は、研究開発環境の改善の柱となる。日本のがんゲノム治療は欧米より実用化の取り組みが遅れている。臓器別の治療よりも、各患者の遺伝子変異に基づく治療が進めば、患者にとってはより最適な治療を受けることができる。

強化プランには、革新的な医薬品を早期に承認することで、世界に先駆けて実用化させることも盛り込んだ。治験先進国を目指す。

新薬の創出をめぐっては薬価制度改革として、画期的な新薬を高値で維持する「新薬創出加算」の適用対象について、貢献度が高い上位25%の企業に制限することになった。

これに対し厚労省の担当者は、医療系ベンチャーへの支援を行うことで「薬価制度改革の痛みを吸収できる」としている。


以前にも書いたように、先進諸国ではヒトの平均寿命が生物学的限界に近づきつつあり、「新薬の登場よりも、特許切れのペースが速い」状況の中で、「新薬を次々と研究開発して儲ける」という製薬会社のビジネスモデルは既に過去のものになっています。ということで、「創薬」は、もはや国の成長戦略にはなり得ません。海外の製薬大手の多くはリスク回避のため、ジェネリック市場に参入すると同時に、研究はベンチャーに、臨床開発はCROにアウトソースし、マーケティングと監督官庁との交渉に特化した「商社」的なものに変化してきました。

海外の製薬大手が創薬研究をベンチャーにアウトソースするのはベンチャーが「冒険」だからです。膨大な研究費を創薬研究につぎ込むリスクを避けているのです。AI創薬が実現しても、この大きな流れを変えることはできないと思います。

また、ベンチャーは元来ギャンブル的な狙いで作られる企業ですから、日本のお役所仕事に組み込もうとすると、つい先日(昨年の12月5日)国からの補助金約4億3100万円を不正に受給した容疑で逮捕された、スパコン開発ベンチャー社長のようなケースが増えるかもしれません。国がベンチャーを支援して確実な社会貢献を求めるのは、もともとおかしな話です。

「AI創薬」の記事でも書きましたが、これまで日本で創薬された薬の例は、プラバスタチン(メバロチン®)、タクロリムス(プログラフ®)、フェブキソスタット(フェブリク®)、ニボルマブ(オプジーボ®)など、数えるほどです。AIでアメリカや中国に大きく遅れている現状を考えると、日本で「AI創薬」を使って新しい薬が発見される可能性は、今後ますます低くなると思います。これらの現状から判断して、日本が「創薬大国」を実現するのは、北朝鮮が「核大国」を実現するよりもはるかに難しいと思います。

関連記事
iPS創薬がついに実現へ?

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする