BBCの記者が書いた相撲の記事がおもしろい

スキャンダル相次ぐ日本の角界――何が起きているのか
BBC NewsのRebecca Seales氏が書いた、”Inside the scandal-hit world of Japan’s sumo wrestlers“という記事の日本語訳がありました(英語の記事をみる)。相撲の歴史と現状について、私が知らないことが多く書かれていたので、以下に抜粋を紹介します。


日本で相撲はただのスポーツではない。伝統に根差した過去、そして日本人とは何かを垣間見ることができる儀式だ。厳格な儀礼に基づいて行動規範が決められ、海外出身であることは、手を抜く言い訳にはならない。

全ての力士は人前で伝統的な服を着て、侍のようにまげを結わねばならない。力士は取組で勝っても負けても同じように、感情を表に出してはいけない。謙虚さを持ち、穏やかに話す、「品格」のある振る舞いを求められる。

非常に保守的な日本相撲協会の規定により、45カ所の相撲部屋ではそれぞれ常時、外国人を一人だけ入れることができる。相撲部屋に入る多くの外国人はわずか15歳で、最年長でも23歳だ。それから、食事も、話し方も、戦い方も、服装も何でも日本人のように振舞う。

相撲部屋には厳しい上下関係があり、元力士の親方がその頂点に立っている。ジャパン・タイムズの元コメンテータ―で、相撲専門家のマーク・バクトン氏はBBCに対し、「サッカーみたいに、マンチェスターユナイテッドから別のチームに移籍できるといったものじゃない。ずっと同じ相撲部屋に所属する。相撲部屋を出るには、相撲を辞めるしかない」と話した。

大相撲には6つのリーグがあり約650人の力士がいるが、上位のリーグには約60人しかいない。下から4つのリーグ、幕下までの力士は全員、無給。非常に有能な力士でも、夢に描いた給料をもらうまで、2、3年かかることがある。いったん給料をもらえるようになると、その額はかなり良い。上から2番目のリーグの十両でも月に約1万2000ドル(約135万円)、最上位の幕内ではスポンサー料も含め、月に約6万ドル(約675万円)程度もらえる。

しかしそれを上回って強い動機も豊富にある。若手力士は、たとえ真冬でも薄い浴衣を着て下駄を履くこととされている。車の運転は許されていないが、幕内以上になると運転手を持てる。携帯電話や恋人については、関取と呼ばれる幕内と十両より格下の力士は厳密には禁止されているが、時には見逃される場合もある。女性は相撲部屋に住めず、力士は少なくとも十両に到達するまで、結婚して妻と共に相撲部屋の外で暮らすことはできない。力士がけがをして幕下以下に降格となった場合、妻や子供を置いて相撲部屋での生活に戻らなければならない。

バクトン氏は語る。「2007年に序の口力士が死亡した事件の前は、暴力は習慣的だった。頑張りが足りないというのが理由で、背中や脚の裏側にみみず腫れがある力士がいたものだった」。白鵬は、この「かわいがり」について衝撃的な説明をしたことがある。「かわいがり」とは、最長45分もの激しい殴打の湾曲表現だ。白鵬は、(かわいがりを受けいていた)当時は毎日泣いていた、と語った。力士は、最初の20分はただただすごく痛いが、殴られても痛みが感じにくくなってくるので、それまでよりは楽になる、と話した。

30年にわたり相撲を見てきた相撲専門ライター、クリス・ゴールド氏は、沈黙の規律は強力だと話す。「何十年にもわたり行われてきた稽古や罰則には、複数の相撲部屋の間で驚くほどの一貫性がある。それはつまり、日馬富士のような出来事が起こると、集団を守るためにそれについて口を割らないことになる」「怪我を負った力士の親方の貴乃花親方が出過ぎた発言をしたとして、秘密主義の規律を破ったと批判する人がいるのは興味深い。他のほとんどのスポーツなら、内部告発をした英雄として称賛されるところだろうに」


興味深い記載が多かったので、長い抜粋になってしまいました。

今回の殴打事件は鳥取市のラウンジでおこったそうですが、「横綱の説教中にスマホを触る」という「相撲道」に反する行動をとった貴ノ岩の「品格」を正すための「鉄拳制裁」だったという日馬富士を弁護するような意見がありました。ということは、これが部屋でおこった殴打事件だったら、記事にある「かわいがり」の延長だとして認められるのでしょうか?

他の部屋に移れない「閉鎖的な部屋制度」、健康生活はほど遠い「極端な衣食住環境」、「労働基準法を無視した給与体系」、「絶対的服従を迫る上下関係」などの日本相撲協会が死守している「伝統」が「かわいがり」や今回の殴打事件に直結していると思います。「伝統」を死守する限り、今回のような形を変えた「かわいがり」は続くでしょう。記者も、記事の中で相撲を「才能ある人材に対し厳しい体罰を何年も与え続けるスポーツ」と断じています。

「権威主義の押し付け」、「組織防衛のためのシッポ切り」、「科学的根拠のない厳しい訓練」、「内部告発者を追い詰める隠蔽体質」、日本にピッタリの国技だと思います。

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