カイワレとエノキタケと冷凍食品

冷凍食品の常識を変えるカイワレとエノキタケ “氷の再結晶化を抑える”技術と“氷結晶の成長を妨げる”素材
以下は、記事の抜粋です。


便利でおいしい冷凍食品は、優れた冷凍技術が支えている。その中でも、品質を維持する画期的な技術として「不凍素材」が注目されている。

日本で冷凍食品が多く出回るようになったのは、1960年代のこと。ただ、そのころの冷凍技術では品質の低下がよく起こっていた。その原因は食品中の水分にある。食品中の水分は-1℃から凍り始め、-5℃でほぼ凍結する。この温度帯をゆっくり通ると氷の結晶は大きくなり、食品の組織を傷つけてしまう。そうなると解凍したときに大量のドリップ(水分)が出てしまい、旨味が流出する。また、歯触りの変化や形くずれが起こってしまう。

冷凍食品の品質を低下させるもう1つの要因は、冷凍食品を保管している間に起こる「冷凍焼け」とよばれる現象だ。いくら急速凍結しても、冷凍食品の運搬や保存の過程で温度が高くなると冷凍食品中の水分が溶け、溶けた水分が再び凍ると氷の結晶が大きくなり組織を傷つける。また、水分が蒸発してしまうこともある。これらの結果、食品が乾燥してぱさぱさになったり、変色したりしてしまうのだ。

ちなみに、家庭用の冷凍庫で凍らせた食品の品質が低下しやすいのは、温度が低下するのに時間がかかり緩慢凍結になるため。また、扉の開閉のたびに温度が上がるため冷凍食品を保存している間に冷凍焼けが進みやすいためだ。

化学メーカーであるカネカの寳川さんたちは、「不凍タンパク質」や「不凍多糖」を加えて、組織内の氷の結晶の再結晶化を抑制するという冷凍技術を研究開発した。

不凍タンパク質(antifreeze protein)は、南極にいる魚の血液内から発見された。このタンパク質は、凍結するとき氷の内部に生成する氷核に強く結合して、氷の結晶の成長を止める機能がある。南極海の魚類は、このタンパク質によって血液や体液を凍りにくくすることで、凍結から身を守っていることが分かった。その後、魚類、軟体動物や植物、昆虫、微生物など、寒冷地に生息するさまざまな生物から不凍タンパク質が見つかっている。

カネカは、カイワレ大根の(不凍タンパク質を含む)エキスを製品化することに成功した。食品を加工するときにカイワレ大根エキスを加えると、冷凍時の氷の結晶を微細化するだけでなく、保存時に起こる再結晶化も抑え、冷凍食品の品質を維持できる。

さらに、エノキタケから不凍多糖も見つかった。2014年にエノキタケエキスの量産化に成功した。カイワレ大根エキスは、タンパク質が変性してしまうため熱や酸にはあまり強くないが、エノキタケエキスは多糖類であり熱や酸に強いという特徴がる。そこで、高温処理が必要な鶏の唐揚げや酸性のゼリーなどに不凍多糖を使えるようになった。

不凍タンパク質は、冷凍したうどんやごはんなど、やわらかくモチモチとした食感を保つのに威力を発揮する。こうした食感は、外側に水分が多く内側の水分が少ないという水分勾配があることで実現する。そこで、麺のちょうどいい水分状態のとき急速凍結すれば、麺の食感を維持できる。保存している間に氷結晶が大きくなれば、この状態が壊れてしまうが、不凍タンパク質を加えることによってこの状態を維持し、食感を保つことができるようになった。

不凍多糖は高温処理が必要な鶏の唐揚げに使われ、肉のパサつきを防止している。デザートでは、ゼリーの形くずれ、生クリームのひび割れ防止などに効果がある。

このような技術の進化によって、さまざまな冷凍食品が誕生し、いまや冷凍できないものは生卵と生野菜だけといわれるほどになった。さて次はどんな製品が登場するのか。楽しみだ。


とても興味深く読ませていただきました。カイワレ大根エキスやエノキタケエキスは、不凍素材として業務用や家庭向けに200品目以上の冷凍食品に使われているそうです。南極など寒冷地の生物が不凍タンパク質や不凍多糖を持っているのは想像できますが、カイワレやエノキが持っているのは不思議ですし、それを見つけて製品化まで持っていったのは本当にすごいと感心しました。

今日、10月18日は1986年に日本食品冷凍協会が制定した冷凍食品の日だそうです。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする